ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ismail Kadare の “The Ghost Rider” (2)

 先週末まで仕事に明け暮れた。秋口からの総括、年明けからの準備。ふだん給料ドロボーのぼくにしては、けっこうがんばったほうだ。おかげで、おしまいには血圧が上がり、活字を読むとなんだかめまいがするので、クリスマス連休は休養に徹し、というと聞こえはいいが、要するにゴロゴロしていた。
 このかん、ぼくの〈娯楽人生〉では大きなイベントとして、まず007の最新作『スカイフォール』を観に行った。007通の同僚に勧められたし、スパイ映画好きのかみさんにも、夢で見たとけしかけられた。開幕、民家の屋根づたいにバイク・チェイス。この趣向は初めて見ましたね。ほかにも、昔なつかしいアストン・マーチンが出てきてニヤッとさせられるなど、☆☆☆★★は確実でしょう。
 それからゆうべ、久しぶりに『見知らぬ乗客』を観た。VHS、DVD時代につづいて今度が3回目。さすがにブルーレイはきれいだった。多少ざらついた画面もあったが、全体的にDVDよりずっといい。安売り版だし、ヒッチのファンなら買っても損はないと思う。

見知らぬ乗客 [Blu-ray]

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 かんじんの "The Ghost Rider" のことだが、ぼくなりに寓話の意味がつかめた(と錯覚した)ところで中断。きのう、それまでのメモを読みかえしてから、ふたたび取り組んだ。1980年の作品で、夏に読んだ "The Palace of Dreams" が81年刊。2冊あわせて読むと、当時のアルバニアの状況と、作者 Ismail Kadare の創作意図がいっそうはっきりするような気がする。つまり本書では、寓話に託して当時の全体主義体制からの脱却を国民に訴え、次作では、同じく寓話形式で体制批判をもくろんだのではないだろうか。
 専門家には笑われそうな解釈だし、万一当たっているとしても、ごく常識的でおもしろくない。ただひとつ確実に言えることは、両書とも、平和ボケした極楽トンボのぼくなどには想像もつかない過酷な状況のもとで書かれた作品である、ということだ。それを今、気楽に点数で評価するとは何ごとだ、とわれながら思う。作者はおそらく、国家国民のために心血をそそいで執筆したにちがいない。文は人なりと言うが、フランス語からの英訳でも作家魂は伝わってくる。そんな気骨のある国民作家は、どこかの国にはいるのでしょうか。