Lauren Groff の "Arcadia" をボチボチ読んでいる。ニューヨーク・タイムズ紙の書評家 Janet Maslin が選んだ去年の 10 Favorite Books の一冊である。Michiko Kakutani が選んだ Ayana Mathis の "The Twelve Tribes of Hattie" がとてもよかったので、Maslin 女史のほうはどうかなと思い、すでにペイパーバック版の出ている本書に食指が動いた。
序盤は正直言って、あまりおもしろくない。文章は散文詩みたいで美しいのだが、クイクイ読めるようなストーリーではなく、本書の世界に引きこまれるまで少々時間がかかってしまった。
1970年代、ニューヨーク州の田舎で、「愛、平等、労働」を理想にかかげたヒッピーたちがコミューンを作って生活している。最初はトレーラーハウスなどに住んでいたが、やがて古い屋敷を改修し、Arcadia House と命名。第1部は、それが完成するまでの話だ。
主人公は Bit という5歳の少年だが、彼は第2部では14歳になっている。たぶん、このあとも彼が主人公だろう。この Bit の目を通してコミューンの日常生活や周囲の自然などが描かれている。
But this morning, Bit wakes alone, heart racing. The icicles in the window are shot with such red light of dawn that Bit goes barefoot over the snow to pull one with his hand. Inside again, he licks it down to nothing, eating winter itself, the captured woodsmoke and sleepy hush and aching cleanness of ice. His parents sleep on. All day, the secret icicle sits inside him, his own thing, a blade of cold, and it makes Bit feel brave to think of it. (pp.22-23)
ぼくはこのくだりを読み、子供のころ、初めてつららを見たときのことを思い出した。たぶん、あれを食べたのじゃないかな。その時のことかどうかは定かでないが、つららの味はいまでも憶えている。雨樋の金具のせいか、錆の味に似ていたような気がする。いま思えば、あのつららも何やら幻想的な風景のひとこまだ。
例によって中途半端な報告だが、上の引用箇所だけでも、本書の散文詩的な雰囲気は十分味わえると思う。きょうはこれにて。