ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Robin Sloan の “Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore” (2)

 これは、残念! のひとことに尽きる。雑感で紹介したような滑りだしで、ほんとうにゾクゾクするほど「序盤は最高」だったのに、謎の真相が見えたあたりでガッカリ。最後は軽く読み流してしまった。
 もちろん、中には大いに満足できる人もいるかもしれない。が、へそ曲がりのぼくは、こういうミステリアスな作品を読むとき、いつもこんなことを考えている。謎としておもしろいかどうかはさておき、その謎は解明に値するものなのか。もっと具体的にいうと、解くことによって多少なりとも人生の真実が見えてくる謎なのかどうか。
 この尺度で判断すると、本書の謎はぼくには「竜頭蛇尾」としか思えなかった。少なくとも、蠱惑的なまでに怪しい序盤の雰囲気から期待するほどではない。途中、恋や友情も描かれるが、それにも心をゆり動かされることはなかった。
 比較的最近読んだ本の中でいちばん似ているのは、去年のアレックス賞受賞作、Erin Morgenstern の "The Night Circus" だろうか。事実、裏表紙にも、両書を関連づけたレビューが載っている。が、あちらは上の評価基準に照らしても、若干の不満はあるものの、さほど気にならなかった。神秘の要素が最後までつづくことも大きい。
 本書の売りはたぶん、謎そのものよりも、全体的に「幻想とハイテクが融合した現代のフェアリーテイル」となっている点だろう。ぼくはファンタジーに詳しくないので勝手な推測だが、コンピュータを駆使して幻想的な謎を解くというのはあまり類例がないのではないか。
 ぼくに想像力と創造力があれば、序盤のシチュエーションをそっくり活かしつつ、あとは自分好みのべつの世界を築きたいところだ。それはしかし、雑感でもふれた天沢退二郎の『光車よ、まわれ!』の二番煎じになりそうな気がする。とにかく、ほんとにほんとに残念。