ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jess Walter の “Beautiful Ruins” (2)

 きのう本書を読みおえたのは夜の11時半。もう寝ようかと思ったが、がんばってレビューを書き、風呂に入ってから寝たのが夜中の3時半。2年前の3月11日の深夜はこうだった。「いや怖かった、今日の地震。生きた心地がしなかった。こんな中でもアクセスしてくださったみなさん、アクセスされたということは大丈夫だったんですね。こんな日に記事を書くなんて不謹慎とは思ったが、今は夜中。結局、職場に泊まる羽目になってしまったものの一息ついたので、洋書オタク健在です、と発信したくてこれを打ち込んでいる」。
 去年のきのうも同じ箇所を引用したあと、ぼくはこう書いた。「(人生の大きな目標はなくても)今日はこれを何ページ読もう、という1日の小さな目標だけはある。そのノルマを果たすことが、そしてその本を真剣に読むことが、とりあえず今のぼくの人生だ」。
 というわけで、ゆうべも本を読み、レビューを書いた。それがきのうのノルマだったからだ。でも、ほんとにそんな人生でいいのかな。
 本書にも、似たようなことを考える人物が出てくる。第二次大戦中、アメリカ兵 Alvin がイタリアで若い娘 Maria と出会い、戦後に再会するが、Maria はいまや売春婦。昔のことなど忘れたかのようだ。'"But what were you going to do, rescue this Maria?" Alvin could think of nothing to say. No, of course he wasn't going to take her back to America. So what was he going to do? Why was he here?' (p.231)
 またべつの人物もこう述懐する。'"Fuck me," Shane says. "I think I've wasted my whole life." (p.298) .... "I realize now what an ass I've been."' (p.299)
 もともとネクラで、夜になるとウツ気味のぼくは、こんなくだりを読むと頭をかかえてしまう。
 ほんとうは、もっと明るい場面から引用したかったのだが、いちばん心にしみるくだりはネタバレになりそうだ。……いや、やっぱり書いておこう。状況は想像におまかせします。'....but they are young and the trail is wide and easily traveled. And even if they don't find what they're looking for, isn't it enough to be out walking together in the sunlight?' (p.337)
 結びの一節である。ぼくはしばし茫然となり、「頭をかかえ」たあとだけに、ちょっぴり生きる元気が出てきた。ともあれ、今回のジャケ買いは大当たりでした!