Tanis Rideout の "Above All Things" をボチボチ読んでいる。これはアマゾン・カナダが選んだ昨年のベストテン小説のひとつだ。紹介記事を斜め読みしていたら、the story of George Mallory's legendary attempt to be the first man to conquer Mount Everest というくだりが目についたので興味がわいた。
ぼくはじつは山が好きだ。といっても、実際に登ることはなく、もっぱらドキュメンタリー番組や写真を見て楽しんでいるだけだが、去年他界した父は、60代になっても毎年のように北アルプスの山々に登っていた。
その父の書斎にあったのが、深田久弥の『ヒマラヤ登攀史』。中学生のころ、まずこれに読みふけり、ついで、同じく父の蔵書である8千メートル級の山々の初登頂記録を読み漁った。もちろん邦訳だが、いつかまた読もうと思って、エヴェレスト、K2、カンチェンジュンガ、ナンガ・パルバット、アンナプルナについては原書を入手している。"Nanga Parbat Pilgrimage The Lonely Challenge" というヘルマン・ブールの有名な著書も積ん読中だ。
というわけで、ジョージ・マロリーのことは、「そこに山があるから」というあの名言以外にもなんとなく記憶がある。以上、ぼくにしては相当な(といっても実際はたいしたことがない)予備知識をもって本書に取りかかった。
マロリーとエヴェレストの出会いはこうだ。.... over the course of the afternoon and evening Everest slowly unveiled herself. They watched her stripping away clouds and light. / 'There!' someone had called out when the summit finally appeared―a great fang thrust into the expanse of sky. She towered head and shoulders over all the other peaks nearby. (p.7)
ぼくはこの描写を読み、本書の先行きにちょっと不安を覚えた。取り越し苦労だといいのだけれど。