ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“And the Mountains Echoed” 雑感 (2)

 相変わらず腰痛に悩まされている。歩行は可能だし、椅子に座ってパソコンを打つこともできるのだが、腰を下ろしたり立ち上がったりするのがひと苦労。同様に、寝起きもままならない。
 試行錯誤の末、ロッキングチェアがいちばん楽なことに気がついた。ゆっくり慎重に腰をかけ、やおら反動をつけてパッと立ち上がる。座ったままぼんやり窓の外をながめていると、こんな場面を小説で読んだり映画で観たりしたことがあるな、と思い出した。もはや老後ですな。
 というわけで読書のペースも依然、カタツムリ君だが、ほぼ20日ぶりに Khaled Hosseini の新作、"And the Mountains Echoed" を読んでいる。本が届いたとき、感触をつかむためにちょっとだけ読んでみたのだが、まったく意外なことに、「読みはじめるとすぐに眠くな」り、以来ずっと遠ざかっていた。
 さて、あらためて取り組んでみると、これはいまのところ、実質的には連作短編集に近いものだ。主な舞台はカブールだが、パリや、カリフォルニアのサンノゼなども出てくる。時代は20世紀中葉から今世紀まで。おたがいに関係のある主人公が次々に登場し、昔のエピソードがべつの視点から物語られることもある。輪舞形式の長編小説といってもいいだろう。
 テーマは早とちりかもしれないが、家族愛、人間愛かな。戦乱の歴史や政治情勢も少しだけ紹介されるが、それはとりあえず背景にとどめたまま、親子や兄弟姉妹を中心にもっぱら、心に深い傷を秘めた人間同士のからみあいが描かれる。わるくはないが意外に常識的な内容で、少なくとも、腰の痛みを忘れて読みふけるほどの出来ではない。ま、今後を期待しましょう。