ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“How To Get Filthy Rich in Rising Asia” 雑感

 Mohsin Hamid の新作、"How To Get Filthy Rich in Rising Asia" をボチボチ読んでいる。先日紹介したサイトに載っている Man Booker Prize Eligible 2013 のリストによると、堂々第2位の作品である。第1位は Kate Atkinson の "Life after Life" [☆☆☆★] だが、いまのところ、ぼくの見立てでは本書のほうがずっといい。
 Mohsin Hamid はパキスタンの作家で、2007年には、第2作の "The Reluctant Fundamentalist" [☆☆☆★] がブッカー賞最終候補作に選ばれている。同書は「なかなか読みごたえがあった」ものの、「生硬な主張も見られ、完全には熟していない」点が気になった。同じ年、たまたまやはり最終候補にのこったインド人作家、Indra Sinha の "Animal's People" [☆☆☆★★★] のほうが出来がよく、「今度の〈印パ対決〉はインドの勝ち」などと軽口を叩いた憶えがある。
 さてこの "How To ... " だが、上述のとおり "Life after Life" よりすぐれているどころか、最低でもブッカー賞のロングリスト、さらにはショートリストさえうかがえる出来ではないだろうか。……ずいぶん大風呂敷を広げてしまったが、どうせ当たるも八卦当たらぬも八卦。あとで大恥をかくのも毎度のことだ。
 それどころか、じつはまだ序盤なので、この先ずっこける可能性がなきにしも……いやたぶん、ありません!
 簡単にいうと、これはハウツー物というか、self-help book の体裁を借りたフィクションである。テーマはタイトルのとおりだが、もちろん「金持ちになる方法」にからんでふくらませた物語がおもしろい。
 第1章は、'Move to the City'。これが金持ちになる第1ステップだ。パキスタンなのだろう、貧しい村に住む一家の父親が都会(ラホール?)で出稼ぎ中。やがて金を貯め、狭いながらも街のアパートに妻子を呼び寄せる。その際……あ、これは文字では紹介できませんな。とにかくユーモアたっぷりで、エネルギッシュ、リズミカルな文体に惹きつけられる。この先も大いに楽しめそうだ。