ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“TransAtlantic” 雑感 (2)

 きのう出かける前に大急ぎで書いた雑感を読みかえしたところ、いろいろなミスを発見した。再録した昔のレビューも気に入らず改稿。どうでもいいような駄文なのだけれど、少しでもましなほうがいい
 きのうの外出先は、六本木の国立新美術館。書道の大家、手島右卿の作品展である。ぼくはふだん書道にはほとんど関心がないが、同僚から招待券をもらったので、大学時代の友人といっしょに見に行った。素人目にも、すごい、としか言いようがなかった。
 夕食は恵比寿のガーデンプレイスで。ここを訪れたのは、ウディ・アレンの『人生万歳!』をガーデンシネマで観たとき以来だから2年ぶり。その後、同館が閉じてしまったのは残念きわまりない。
 閑話休題。ゆうべ帰宅してさらに一杯やったのがたたり、きょうは思ったほど進まなかったが、なんとか "TransAtlantic" の目鼻がついてきた。これはどうやら旧作 "Let the Great World Spin" と同じく、実質的には短編集に近い輪舞形式の長編のようである。McCann は短編が得意なのかもしれない。
 第1部は、きのう思わせぶりに紹介した第3話 'Para Bellum' がいちばんいい。1998年に時代が飛び、主人公はアメリカの上院議員 George Mitchell。クリントン大統領の意向を受け、北アイルランド紛争の調停のため、たびたび彼の地へおもむくことになる。これまた大西洋を横断する人間というわけだ。
 結末はすぐにわかった。だから伏線も容易に読み取れたが、それでも心にしみた。ネタを割れないのが残念だ。
 第2部に入ると、ここでも主人公が交代するものの、彼ら彼女たちはすでに何らかのかたちで第1部で顔を出している。視点を変えた後日談といったところだ。
 粗筋ばかり紹介してもおもしろくないので、きょうは気に入ったくだりを引用しておこう。Emily は未婚の母で新聞記者。長年いっしょに暮らしてきた娘がアイルランドで結婚したばかりである。
She could go now, thought Emily. Return to Newfoundland, alone. She would face the days, alone. She would write. Find a small content. A graceful levity.
The lake was tidal. It seemed to stretch for ever to the east, rising and falling like a breathing thing. A pair of geese went across the sky, their long necks craned. They soared in over the cottage and away. They looked as if they were pulling the colour out of the sky. The movement of clouds shaped out the wind. The waves came in and applauded against the shore. The languid kelp rose and fell with the swells. She could be forgiven the thought that she was already stepping back toward the sea. (p.220)