今年のブッカー賞候補作、NoViolet Bulawayo の "We Need New Names" を読了。Bulawayo はジンバブエ出身の新人作家で、本書は彼女の長編デビュー作である。さっそくレビューを書いておこう。
399. “We Need New Names” NoViolet Bulawayo(2013)[☆☆☆★★] ジンバブエからアメリカに移住した少女ダーリンの体験を綴った青春小説。実質的に短編集の味わいで、前半はダーリンをはじめ、貧しい村の少年少女たちが繰りひろげる狂騒劇が楽しい。教会での悪魔払いの儀式や、少女の中絶騒ぎなど抱腹絶倒もの。一方、死の床にあるダーリンの父親をワルガキたちが見舞うシーンには、しんみりさせられる。かと思えば、黒人たちによる白人の屋敷の襲撃事件や、子どもたちが政治活動家の惨殺を再現するくだりでは緊張が走り、子どもの無邪気さと残酷さが浮き彫りにされる。後半の話題は、ダーリンがアメリカでうけたカルチャーショックや、二度と帰れなくなった祖国への複雑な思い、さらには、本名を隠し、新しい名前で不法就労に従事する移民同士のふれあい、彼らの塗炭の苦しみなど。いずれも想定内のテーマだが、テンポよく畳みかけるような文体がすこぶる効果的で思わず引きこまれる。両親や友人だけでなく、自国の文化そのものと決別し、移住先ではわが子との断絶もしいられる第一世代の移民たち。もとより完全に絆が切れるわけではなく、彼らの引き裂かれた心を、青春小説のスタイルでみごとにとらえた作品である。