ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

NoViolet Bulawayo の “We Need New Names” (1)

 今年のブッカー賞候補作、NoViolet Bulawayo の "We Need New Names" を読了。Bulawayo はジンバブエ出身の新人作家で、本書は彼女の長編デビュー作である。さっそくレビューを書いておこう。

We Need New Names

We Need New Names

[☆☆☆★★] ジンバブエからアメリカに移住した少女ダーリンの体験を綴った青春小説。実質的には短編集の味わいで、前半はダーリンをはじめ、貧しい村の少年少女たちが繰りひろげる狂騒劇が楽しい。教会での悪魔払いの儀式や、少女の中絶騒ぎなど抱腹絶倒もの。一方、死の床にあるダーリンの父親をワルガキたちが見舞うシーンには、しんみりさせられる。かと思えば、黒人たちが白人の屋敷を襲撃する事件や、子供たちがある政治活動家の惨殺事件を再現するくだりでは緊張が走り、子供の無邪気さと残酷さが浮き彫りにされる。後半では、ダーリンがアメリカでうけたカルチャーショックや、二度と帰れなくなった祖国への複雑な思い、さらには、本名を隠し、新しい名前で不法就労に従事する移民同士のふれあい、彼らの塗炭の苦しみなどが描かれる。いずれも想定内のテーマだが、テンポよく畳みかけるような文体がすこぶる効果的で思わず引きこまれる。両親や友人だけでなく、自国の文化そのものと決別し、移住先ではみずからの子供とも断絶をしいられる第一世代の移民たち。もとより完全に絆が切れるわけではなく、彼らの引き裂かれた心を、青春小説のスタイルでみごとにとらえた作品である。