ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Charlotte Mendelson の “Almost English” (1)

 すっかり予定が狂ってしまったが、おととい今年のブッカー賞候補作、Charlotte Mendelson の "Almost English" を読了。きょうまでレビューを書く時間が取れなかった。メモを見て思い出しながら書いておこう。

Almost English

Almost English

[☆☆☆★★] ケッサクな恋愛・家庭・学園コメディーである。終始一貫、思わずクスっと笑ってしまう愉快なエピソードが連続。文学的な深みは望むべくもないが、こんな小説でそれを望むのは野暮、と割り切るのが大人の知恵だろう。ドジで不器用だが、うぶで純情な高校生の娘マリーナと、おなじくドジで不器用だが、家族思いで愛情豊かな母親ローラの話が平行して進む。電柱にぶつかったり、ディナーの席で皿をひっくり返したり、といった寸劇は日常茶飯。マリーナはイケメン少年にあこがれるうち、ようやくほかにボーイフレンドができたものの、その果敢なアタックを受けてドギマギ。夫が家出したあと、娘ともども義理の母親と同居するようになったローラも、不倫相手の医師の妻と顔をつきあわせてアタフタ。そこへなんと、長らく音信不通だった夫が手紙をよこし……と、おもな出来事をひろってみても他愛もないものばかりだ。それなのに「思わずクスっと笑ってしまう」のは、ひとえに作者の話術が巧妙だからである。主筋だけでなく、母と娘の心理状態もパラレルで、一方がパニックにおちいったときは相手もまたしかり、という展開もうまい。難易度の高い口語表現も散見されるが、英語は総じて標準的で読みやすい。