ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Paul Auster の “Report from the Interior” (2)

 これで去年に引きつづき、Auster の自伝を読んだとになる。さては熱心なファンだったのかと思われるかもしれないが、じつはファンと言えるほどではない。たしかに Auster は、ぼくにとって「新作につい手が伸びる作家のひとり」ではあるものの、それもここ数年の話で、有名な旧作をいくつも読み残している。
 そもそもぼくは、どんな作家でも小説以外の作品にはあまり関心がなく、自伝や日記、書簡集のたぐいはほとんど読んだためしがない。例外はドストエフスキーの日記、トーマス・マンチェスタトン、T・S・エリオット、ロレンス、オーウェルの評論くらいかな。(だからおまえはだめなんだ、という某先生のお叱りの声が聞こえてきます)。
 それゆえ Auster についても、新作が出たと聞いて内容も調べずに注文したら、たまたま去年も今年も自伝だったというだけの話だ。それなのに、「オースター文学における人生の不条理というテーマ」だの、「オースターの本質」だの、いかにも通ぶったことをレビューに書いてしまった。知ったかぶりはお手のもの、とひらき直るしかない。
 "Winter Journal" もこの "Report from the Interior" も、Auster のファンや専門家が読めば、ぼくのような文学ミーハーの目にはとまらない真の意味で興味ぶかい点がきっとたくさんあることだろう。と、それくらいの想像はつきます。
 タイトルと同題の第1部 'Report from the Interior' にしても、レビューでは「どこの国のどの少年でも大同小異のような体験談」と簡単にまとめてしまったが、じつはほれ、ここがのちの作品のあそこと関連するじゃありませんか、という指摘がプロならいくらでも出来そうだ。けれども、ぼくにはとても無理な芸当なので、そういえばぼくも Paul 少年と同様、ポーやスティーヴンソン、コナン・ドイルなどの小説に夢中になったものだ、と自分の読書体験を思い出すしかなかった。
 そこで結論。雑感でも引用したが、'your purpose is to chart the workings of your young mind, to look at yourself in isolation and explore the internal geography of your boyhood' (p.45) とあるものの、第1部は「素人目には」、この引用箇所から期待するほど深い内容ではないような気がする。ただし、繰りかえすが、ファンや専門家には興味が尽きないことだろう。