きのう再録した "Prodigal Summer" (2000) のレビューを読み返すと、「文学史に残る傑作」という一節があり、思わず苦笑してしまった。ほんとうにそんな大傑作と言えるのかどうか、もし仮に、レビューを書いてから10年のあいだにアメリカ文学史の新刊が出ているとして、その中に同書に関する記述があるかどうか。そう考えると怪しいな、という気がしないでもない。
が、ぼくには確たる理由があって、同書は今でも [☆☆☆☆★] だと思う。つい筆が滑って大げさになったきらいはあるにせよ、読後の感動はいまだに忘れられない。それゆえ文字どおり拙文ながら、いっさい加筆訂正はしなかった。
上のレビューを読んでもうひとつ気づいた点がある。今回の "The Poisonwood Bible" とあわせ、Barbara Kingsolver は king の名にふさわしい巨視的な世界観の持ち主ではないだろうか。文明と自然、エコロジー、西洋キリスト教社会と異文化、キリスト教と土着信仰といった、二つの作品の(ぼくが選んだ)キーワードが示しているのは、彼女が人間の営みを大きなスパンでとらえているということだ。
そのマクロの世界観と同時に、日常生活における人間の姿を具体的にこまかく描くミクロの眼もそなえている。それが Kingsolver のすごいところだと思う。
そこで今日は、"The Lacuna" (2009) と "Flight Behaviour" (2012) のレビューも再録することにした。4本のレビューから彼女のすごさ、ぼくのとらえた一定の作家像が浮かんでくるものと思う。

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Flight Behavior: A Novel (P.S.)
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(写真は宇和島市来村(くのむら)川。きのうアップした風景からやや川下)。
