ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Elena Ferrante の “The Story of the Lost Child” (1)

 きのう Elena Ferrante の "The Story of the Lost Child" を読了。一気にレビューを書いてもよかったのだが、ひと晩寝かせることにした。雑感でも紹介したとおり、ニューヨーク・タイムズ紙の10 Best Books of 2015の一冊であり、同紙の書評家 Michiko Kakutani も My Favorite Books of 2015 に選んでいる。

The Story of the Lost Child: Neapolitan Novels, Book Four

The Story of the Lost Child: Neapolitan Novels, Book Four

[☆☆☆] 2012年から毎年1冊ずつ書かれてきた〈ナポリ小説〉シリーズ4部作の完結編。旧作は未読だが、たぶん最初から読んだほうが楽しめるものと思う。本編は各人物の性格や関係、おもな過去のエピソードが旧知の事項として始まる。ファンの記憶を呼びさます程度の説明しかなく、しかも数多くの人物が次々に登場するので憶えにくい。巻頭の人物一覧を頼りに読み進むうちに、やがて見えてくるのが恋愛相関図。作者と同名の女流作家エレナがダブル不倫。相手の男はエレナの親友リーラの元彼といったぐあいで、新旧の恋愛、不倫、三角関係が入り乱れ、まさにナポリは恋の街である。凡人の障害なき自由恋愛は時代の風潮、現代文化そのものだが、劇的であるはずの事件が劇的感動を生まないのは、それだけ人間が矮小化した証左かもしれない。全体は2部構成で、第1部の最後で起きた事件をきっかけに、テーマは恋愛からエレナとリーラをめぐる友情、家族愛へと移行する。タイトルに関係するこちらの話のほうが出来はいいが、やはりパンチ不足。イタリア語からの英訳で、大味のイタリア料理を食べすぎてげんなり、といった気分になる。
(写真は、宇和島市龍華橋からながめた辰野川)