ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Yann Martel の “The High Mountains of Portugal” (2)

 これは雑感でも書いたとおり、ご存じ2002年のブッカー賞受賞作、"Life of Pi" ほどのクイクイ度ではない。が、それでも3作つづけて読んだ(あちらのファンが選んだ)今年のブッカー賞有資格候補作の中では、本書がいちばん出来がいいと思う。
 そういえば、去る4月に読んだ昨年のギラー賞受賞作、Andre Alexis の "Fifteen Dogs" も下馬評に上がっているようだ。ぼくのささやかな有資格候補作リストで格付けすると、次のようになる。
1."The High Mountains of Portugual ☆☆☆★★★
2."What Belongs to You" ☆☆☆★★
3."Fifteen Dogs" ☆☆☆★
4."Mothering Sunday" ☆☆☆★
 こんなリストを作っても何の意味もない。まあ、単なるお遊びですな。とはいえ、もしこれが実際、ロングリストと重なるとしたら、なんだか今年は不作だな、という気がする。まだ読み洩らしている多数の「候補作」の中に、きっと名作秀作があるものと期待したい。
 点数は "The High Mountains of Portugual" より低いが、じつは "What Belongs to You" に後ろ髪を引かれる思いでいる。「人に心から愛されたことがなく、自分もまた人を心から愛することができない。そのいかんともしがたい現実に傷ついた心情が、さりげない風景描写を通じてしみじみと伝わってくる」。ぼくはこういう〈泣ける小説〉に弱い。
 看板に偽りあり。この Martel の新作については次回に補足しよう。
(写真は、宇和島市毛山橋のたもとにある古い民家。帰省するたびに、どこかが建て替えられたり更地になったりしている。この家はどうだろうか)