北海道旅行最終日。今はまだ札幌のホテルにいるが、これから昨日に引き続き、小樽へ行く予定。
出かける前に、今読んでいる本のことを少しだけ書いておこう。アメリカ在住のインド系作家 Akhil Sharma の "Family Life" (2014) である。今年の国際ダブリン文学賞 (International Dublin Literary Award) の受賞作だ。
この賞は日本ではあまり知られていないようだが、イギリスのファンのあいだでは権威のある文学賞のひとつに数えられている。ぼくも本ブログを中断するまで、わりとまめにフォローしていた。
本書の主人公は Ajay というインド人。1970年代の昔、8歳のときにアメリカに移住したときの物語が回想形式で綴られる。あ、いけない、もう出発の時刻だ。この続きは新千歳空港か、家に着いてから書こう。
……さて、ようやく帰宅したのは夜の11時。まだ頭がぼんやりしているが、とりあえず、読書メモから要点だけ拾っておこう。
(1) 定番のカルチャーショックも描かれるが背景程度。
(2) Ajay の兄 Birju は成績優秀でハンサム。移住後もすぐに友人ができる。ところが Ajay はなかなか学校に溶け込めない。兄への嫉妬心があり、賢兄愚弟の関係。
(3) Birju は名門高校に合格するが、これから、というときに不慮の事故にあい、植物状態になってしまう。これにより家庭生活は一変。地獄の介護の日々が始まる。ここでも Ajay は正直に自分のエゴイズムを認めている。
介護は今や小説でもおなじみのテーマだと思うが、アメリカへの移民とそのコミュニティーを中心にすえている点が目新しいかもしれない。その中で Ajay は子供らしい selfishness をむき出しにするとともに、もちろん兄に対して深い愛情をいだいてもいる。この葛藤はなかなか読みごたえがある。