ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Gerbrand Bakker の "The Detour" (1)

 愛媛の田舎に帰ったら本書を一気に片付けようと思っていたのだが、いざ帰省してみると当て外れ。オリンピック放送を見るか睡眠か、というグータラ生活が始まってしまった。
 これではいかん、と昨日からギアチェンジ。先ほどようやく読みおえた。2013年の Independent Foreign Fiction Prize の受賞作で、2014年の国際ダブリン文学賞最終候補作でもある。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★] タイトルの意味は最後にわかる。それまで謎と暗示に満ちた「まわり道」を楽しむ小説である。女はなぜアムステルダムに夫をのこして単身、緑豊かなウェールズの田舎町に住みはじめたのか。詮索好きな隣人とふれあい、黙々と雑事をこなし、森のなかを散策する女エミリ。彼女はエミリ・ディキンソンの専門家で、さりげない描写を通じて次第にディキンソンの詩さながら、傷ついた孤独な人生が浮かびあがる。愛、別離、死。静かな行間に深い悲しみが立ちこめている。胸が張り裂けそうになる人生最後の「まわり道」。そんなエミリが逃避行で出会った少年の「まわり道」に救われるエンディングに涙。