ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Death of Bees" 雑感 (2)

 田舎から帰ると仕事の山。覚悟はしていたが、さすがにヘコたれた。とはいえ、移動日もふくめて十日間も帰省したのだから、楽あれば苦あり。がんばってやるっきゃない。
 でもまあ、きょうで何とかノルマは終了。中断していた "The Death of Bees" に、先ほどからまた取り組んだ。おもしろい!
 どこまでネタを割ろうか迷ったが、裏表紙の紹介記事を読むと、ちゃんと「そのこと」が書いてある。なあんだ。
 前回「ブラックユーモアにあふれ」と述べた一件である。まず、主人公の少女 Marnie の妹 Nelly が父親を枕で窒息死させる。その後、夫の死に気づいた妻は自殺。母親の死体を発見した Marnie は Nelly といっしょに両親の死体を庭に埋める。
 隣りに住む老人 Lennie はゲイ。少年と問題を起こして街じゅうの鼻つまみ者だが、いつのまにか両親がいなくなった姉妹に同情、親代わりに二人の面倒を見る。ところが、飼い犬が庭をしきりに嗅ぎまわり……。
 Marnie は15歳で成績優秀だが、酒、タバコ、ドラッグ、セックスと生活は荒れ放題。Nellie は12歳。バイオリンの天才だが神経過敏、ときどき発作を起こして暴れまわる。
 とまあ、人物像をざっとメモ書きしただけで、ブラックユーモアたっぷりのドタバタ喜劇が目に浮かんでくることだろう。ほかにも、レズやら不倫やら話題がつきない。しかもユーモアにつつまれている。というわけで、これはとにかくおもしろい!
 以下、珍しく日本文学の話。何年か前、「日本文学は読まないのか」と友人に訊かれたことがある。「村上春樹も英訳なら読むかも」などと答えて不興を買ってしまったものだが、それからさかのぼること、ざっと十年くらい前は、純文学といえば日本の作品ばかり手に取っていた。それがあるとき飽きてしまった。同じころ、『アンナ・カレーニナ』の英訳版に出会った。以後、海外文学にのめり込み、今日にいたっている。
 ところが最近、どういうわけか日本のものもまた読んでみよう、という気になってきた。今までも、寝床では藤沢周平をはじめ時代小説を楽しんでいたのだが、それもひと区切りついた、ことにしておこう。
 そこでまず選んだのが山田詠美。「十七歳なんて、まだ子供だもの。目に見えないものに惹かれる程、余分なものに飢えてはいない。自分の目や、そこから見て、心がとらえるものを、皆、素直に信頼しているのだ。」
 ご存じ『放課後の音符』の冒頭の一節だが、これ、ほんとですなあ。ぼくの場合、「目に見えないものに惹かれ」て文学に接すること多いような気がする。そのわりに実生活では、昔も今も十七歳の少年よろしく、ものごとの表面しか見ていない。だめだなあ、と思いながら昨夜は眠ってしまった。
(写真は、宇和島市神田(じんでん)川にかかる御通(おとおり)橋。宇和島藩の藩主は代々、この橋をわたって菩提寺のひとつ、通りの奥に小さく見える法円寺を訪れた)