ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Lisa O'Donnell の “The Death of Bees” (1)

 2013年の英連邦作品賞(旧英連邦作家賞)および2014年のアレックス賞受賞作、Lisa O'Donnell の "The Death of Bees" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

The Death of Bees

The Death of Bees

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[☆☆☆★★] 三分の二あたりまですこぶる快調。グラスゴーを舞台に十代の姉妹の繰りひろげる青春ドタバタ喜劇が大いに楽しめる。なにしろ、姉妹が自宅の裏庭に両親の死体を埋め、隣りの老人がそうとは知らず、いつのまにか両親のいなくなったふたりに同情。親代わりに面倒を見るものの、老人の飼い犬が庭をしきりに嗅ぎまわる。とそんなブラックユーモアは文字どおりケッサク。一方、姉は酒タバコ、ドラッグ、セックスと無軌道な生活を送り、神経過敏な妹は絶叫マシンよろしくヒステリーを起こす。老人はゲイで性犯罪歴もあるが、ふたりの養育をめぐって姉妹の祖父と対決。ほかにもレズやら不倫やら、盛りだくさんの話題が三者三様、姉妹と老人の視点から交代でテンポよく活写される。が、こうした破天荒な物語をうまく締めくくるのはむずかしいものだ。奇想天外な結末と思いきや、それまで通奏低音として流れていた家族愛、隣人愛のすばらしさが前面に出ておしまい。無難だが常識的な主旋律といわざるをえない。