ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ottessa Moshfegh の “Eileen” (1)

 今年のブッカー賞最終候補作、Ottessa Moshfegh の "Eileen" をゆうべ読了。ひと晩寝かせたところで、さて、どんなレビューが書けますやら。

Eileen: Shortlisted for the Man Booker Prize 2016

Eileen: Shortlisted for the Man Booker Prize 2016

[☆☆☆★] なるほど、これはやっぱり青春小説だったか、と最後に納得。しかも通過儀礼というおなじみのテーマである。途中、それをほとんど忘れさせてしまうほど巧みなストーリー・テリングがすばらしい。老婦人のアイリーンが半世紀も昔、ニューイングランドの田舎町で過ごした最後の日々を回想する。何やら大事件が起きたらしい。それはいったい何か。この興味だけで終盤まで引っ張るとは恐れ入る。しかも事件の輪郭さえつかめない。娘時代のアイリーンをはじめ、アル中の父親、彼女が勤めていた少年院の同僚など、顔を出すのは性格・感情ともに単純化された人物ばかり。それだけに彼らが極端な言動に走っても説得力があり、小さなエピソードの混ぜ具合もうまく、つい話の流れに乗せられてしまう。次第に盛り上がるサスペンスもおみごと。これならさぞ衝撃的な事件が待っているはず。実際、それは衝撃的である。が、その真相を知ったからといって得るものは何もない。要するに青春の嵐だったというだけだ。尋常ならざる嵐ではあるが、通過儀礼のわりに共感できないぶん損をしている。