ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ottessa Moshfegh の “Eileen” (2)

 先ほどイギリス各社のオッズを調べたところ、本書はいちように最下位。ぼくはまだ最終候補作を2冊読み残しているが、おそらく順当な予想だろうと思う。
 同じく断言は控えるが、ロングリストの中には、これよりほかにもっとショートリストに残るべき作品があったのでは、という気がする。the Mookse and the Gripes のディスカッションにも、そもそもこれが選ばれるとは思わなかった、という意見があるくらいだ。
 もちろん、雑感にも書いたとおり、本書は読み物としてはかなりおもしろい。何か大きな事件が起こったことはすぐにわかるのだが、それがどんなものかは終盤、種明かしの直前までわからない。いや、読み巧者ならピンときたかもしれないけれど、なにせ勘の鈍いぼくのこと、サッパリわからなかった。
 途中、特定の人物にスポットが当てられるたびに、お、こいつと Eileen が何かしでかすんだろうな、と勝手に思い込み、そのたびに読みが外れた。一方、「さあさあ、これから大きな事件が起きますよ、と張り扇をバシバシたたくような書き方」もされている。Ottessa Moshfegh は初耳の作家だが、天性の storyteller ではないかしらん。
 が、これは途中だけでなく、最後まで読み通しても「知的昂奮を覚えるような作品ではない」。事件の「真相を知ったからといって得るものは何もない」からだ。
 かなりエグイ事件なので、邦訳が刊行されるかどうかはわからない。とはいえ、なにしろブッカー賞最終候補作だ。ハクは十分。かつオモシロ本ということで、こんな系統の作品がお好きな某社あたり、もう飛びついているかもしれませんね。
(写真は宇和島市真教寺。ぼくの小学生のころはたしか荒れ寺に近く、この境内では遊ばないように、という先生からの注意もあったほどだ)