ゆうべ、今年の全米図書賞の最終候補作、Jacqueline Woodson の "Another Brooklyn" を読了。すぐにレビューを書きたかったのだが、いつも駄文のわりに時間がかかるのであきらめた。ひと晩寝かせた効果はあるでしょうか。
[☆☆☆★★] 思い出すことども。それは出会いと別れである。とりわけ家族や、多感な青春時代をともに歩んだ友人たちとの出会いと別れ。人生でこれほど切ない思い出はないかもしれない。本書はそうした記憶の断片をちりばめ、一瞬の光景を点在させた詩情あふれる作品である。感傷的になりがちなテーマだが、最初はいささか理解に苦しむほど各ピースが分散。それが次第にいくつかの絵柄に収斂するというジグソーパズル方式が功を奏し、忘れえぬ人びとへの思いがしみじみと伝わってくる。1970年代、アフリカ系の少女オーガストが思春期を過ごした危険な街、ブルックリン。彼女はなにを見て、なにを感じながら、おとなに近づいていったのか。ひるがえって自分は、と読者自身、わが青春をふりかえりたくなることだろう。