ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Underground Railroad" 雑感

 寝床の中で小川洋子の『海』、電車とバスの中では Colson Whitehead の "The Underground Railroad" を読んでいる。どちらもなかなか進まない。
 就眠儀式として読む本は、どんな名作でも10分間が限度。おかげで『博士の愛した数式』など3回も挫折。いまだに通読したことがない。『海』は短編集だから、と思って『数式』から乗り換えたのだが、どうやら週末までかかりそうだ。
 "The Underground Railroad" は今年の全米図書賞の最終候補作。ガーディアン紙が本命扱いしているようなので興味をもった。10月9日付記事の小見出しによると、luminous, furious and wildly inventiveで、This thrilling, genre-bending tale of escape from slavery in the American deep south contains extraordinary prose and uncomfortable home truths とのこと。
 が、ぼくは最初、眠くて仕方がなかった。アメリカの黒人奴隷の物語といえば、テーマ的にはもちろん軽視できないのだが、たまたま7月に Yaa Gyasi の "Homegoing" [☆☆☆★★★] を読んだばかり。え、またか、と思ってしまった。
 同書の感想にも書いたかもしれないが、あえて不謹慎を承知で言うと、このテーマはフィクションとしては想定内。どんな話が出てきても、さもありなんと思ってしまう。そんな偏見の目で読んでいた、いや、いまでも読んでいるのがいけない。おかげで、なかなか先へ進まない。
 uncomfortable home truths のひとつを挙げておこう。The whites came to this land for a fresh start and to escape the tyranny of their masters, just as the freemen had fled theirs. But the ideals they held up for themselves, they denied others. .... Stolen bodies working stolen land. It was an engine that did not stop, its hungry boiler fed with blood. (pp.116-117)
 たしかにその通りである。が、本書で初めて語られた真実ではない。それどころか、今まで何度も語り継がれてきた真実のような気がする。
 というわけで何度か睡魔に襲われたが、それでも新味があれば救われる、と思っているうちにやっと、タイトルの文言 underground railroad の意味がわかってきた。が、どこまでネタを割っていいものやら。
(写真は、宇和島市古城山。東側から)