ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(3)

 Modiano がゴンクール賞作家と知って気になり、同賞の過去の受賞作を調べてみた。するとなんと、1903年から始まる長い歴史の中でぼくが英訳で読んだことがあるのは、Margurite Duras の "The Lover" (1984) と、Andrei Makine の "Dreams of Russian Summers" (1995) の2冊だけ、という恐ろしい不勉強ぶりを発見。愕然としましたね。
 しかも、Duras は好きな作家だから読んだだけだし、Makine にいたってはジャケ買い。どちらもゴンクール賞受賞作と知って食指が動いたわけではない。ちなみに、"The Lover" は未評価だが、"Dreams ...." は☆☆☆★★★。心にしみる作品でしたね。
 そこで積ん読の山をながめたところ、Marcel Proust の "Within a Budding Grove" (1919) と、Julian Gracq の "The Opposite Shore" (1951 受賞拒否)の2冊だけホコリをかぶっていた。Andre Pieyre de Mandiargues の "The Margin" (1967) を持っていなかったことに絶句。今月はもう予算オーバーなので、来月あたり買うことにしましょう。
 ともあれ、ぼくは高校時代、仏文科を受験しようかとまじめに考えたこともあるくらいのに、いままで読んだフランス文学の英訳本といえば、19世紀の大作家のものがほとんどで、現代文学となると、Irene Nemirovsky の "Suite Francaise" [☆☆☆☆★★] など数えるほどしかない。いやはや、これで洋書オタクとは聞いて呆れますな。
 それはさておき、ゴンクール賞作家がノーベル賞を受賞したのは Modiano が初めてと知って、ぼくは少々驚いた。なにしろ上記のとおり、歴史の古い権威ある賞だ。もう何人も受賞していたのでは、と思い込んでいた。
 ちなみに、ゴンクール賞に対抗して1968年に創設されたブッカー賞のほうは、ぼくの見落としがなければ、古い順に William Golding、Nadine Gordimer、V.S. Naipaul、J.M. Coetzeeと、すでに4人もノーベル賞作家を輩出している。ううむ、これはやはり、フランス一国より、旧大英帝国のほうが分母が大きいだけ有利ってことなんでしょうかね。
 あれれ、ぼくにしては珍しく周辺情報の紹介だけで、なかなか表題作 "Paris Nocturne" の話にたどり着きません。きょうはおしまい。
(写真は、宇和島市堀部公園(再アップ)。昔は古城山、三島神社の鎮守の森と連なる里山のひとつだったそうだ)