ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ali Smith の “Autumn” (1)

 ゆうべ、仕事の合間にボチボチ読んでいた Ali Smith の "Autumn" を読了。風呂に入っているうちに、レビューの書き出しだけひらめいた。さて、どんな続きになりますか。

Autumn: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017 (Seasonal)

Autumn: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017 (Seasonal)

[☆☆☆★★] スコットランド独立や、移民の増大、EU離脱など、国論を二分する問題で揺れ動くイギリス。かつての大英帝国の栄光は残滓すらとうに消え、いまや冬の時代を迎えつつあるかもしれぬ時期、つまり秋。本書に散見されるイギリス現代社会への風刺は、そういう〈秋の時代〉をえがいたものだろう。このとき、百歳を超えた一人の老人が療養所でこんこんと眠りつづけている。その老人を足繁く見舞う若い女。本書は、彼女の幼い娘時代に始まる二人の交流と、混乱に満ちた現代、さらには、美術史専門の彼女がとらえた1960年代の状況を織りまぜながら、駆け足でイギリスの最近ほぼ50年を総括した作品である。少女と老人のふれあいはハートウォーミング。お役所仕事にキレた女の奮闘ぶりはユーモラス。ポップアートの説明はリズミカル。三つあわせて文学的なコラージュそのものと言ってよい。最後、冬の初めに咲いた美しいバラは、作者が祖国に対していだく、かすかな希望を象徴しているのかもしれない。