ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The True Deceiver" 雑感 (2)

 年内に本書を読みおえようと思っていたのに、もう大晦日。仕事はひと休みにしたものの、掃除やら買い物やら、年末恒例の雑用に追われ、少ししか進まなかった。
 そこできょうは、文字どおり雑感だけ。最初はこれ、映画『太陽がいっぱい』や『マッチポイント』のような話か、と思っていた。つまり、貧乏な若者が金持ちに近づいて……というあのパターンである。
 舞台は雪深いフィンランドの海辺の村。そこに25歳の女性 Katri と弟の Mats が住んでいる。両親はいない。二人ともバイトで何とか暮らしているが、Katri にはこんな目標がある。Katri studied the house the way she'd done for some time, every morning on her way toward the lighthouse. In that house Anna Aemelin lived alone, all by herself, alone with her money. .... That's where she lives. I will live there too. But I have to wait. I need to think carefully before I give this Anna Aemelin an important place in my life. (pp.30-31)
 やがて実際、Katri は Mats ともども、金持ちの老婦人 Anna の家に移り住む。さては遺産ねらいか、などと村人たちの噂になるが、ってことは本当はべつの意図があるということでしょう。ううむ、わからなくなった。
 ところでこの記事、コロリオフ盤「ゴルトベルク変奏曲」を聴きながら書いている。昔は大晦日というと、定番のフルトヴェングラー盤「バイロイトの第9」を聴いたものだが、あれはBGM向きではない。
 今年はあまり音楽を聴かなかった。仕事のときに中島みゆき、読書のときにクープランをBGMで流していただけ。でも、久しぶりに「ゴルトベルク」を聴くと、やっぱりいいな。来年はもっと音楽を聴かなくちゃ。
 今年は、秋から日本文学の catch up に取りかかった。といってもただの就眠儀式。それでも、いま読んでいる宮下奈津の『遠くの声に耳を澄ませて』など、心にしみる作品に出会うことが多い。来年は昼間も読まなくちゃ。
 その昼間の読書だが、もっぱら通勤快速ならぬ、通勤鈍行でなかなか思うように進まない。休日も〈自宅残業〉の合間に読んでいる。でも来年は頑張らなくちゃ。
 ……と、ここまで書いてから、年越しそばを食べながら軽く一杯。飲んでいるうちに映画のことを思い出した。今年は映画も数えるほどしか見なかった。初めて見たもので食い入るように画面を見つめたのは、『言の葉の庭』と『海の上のピアニスト』。来年はもっと映画を見なくちゃ。
 音楽、読書、映画。なんだかお気楽人生の典型みたいな趣味だけど、ぼくは今年、趣味を通じてひとつの追求すべきテーマを見つけたような気がする。Blake の詩でいえば、"Songs of Innocence" と "Songs of Experience" ということだが、詳しく書いていると除夜の鐘が鳴ってしまう。それにぼく自身、まだ「見つけたような気がする」だけ。これから少しずつ追いかけて行こう。
 追加の記事は、ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番(スメタナ盤)を聴きながら書いていた。第6楽章 Adagio quasi un poco andante で落涙。ここから終楽章にいたる流れは Blake の詩そのものだ、というのは酔ったいきおいでの戯れごとでしょうな。
 では、数少ないリピーターのみなさん、どうぞよいお年を。
(写真は、宇和島市立明倫小学校の通学路に面した目医者さんの、たしかご自宅。なんとなく記憶にある程度だが懐かしい)