ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Tove Jansson の “The True Deceiver” (1)

 年明けて二日間は昼間からアルコール漬け……というほどでもないが、「そこでストップ!」とみんなに言われるまで飲んでいた。今年もやっぱりダメですね。
 おかげで本書は先ほど読了。ムーミン・シリーズで名高い Tove Jansson が大人向けに書いた小説(1982)で、2011年の Best Translated Book Award(最優秀翻訳作品賞)受賞作である。さて、どんなレビューになりますやら。

[☆☆☆] 途中までかなり読ませる。雪深いフィンランドの海辺の村という舞台にまず惹かれ、「魔女」と呼ばれる黄色い瞳の娘カトリが、ムーミンならぬウサギの挿絵で有名な老婦人アンナの財産をねらっているのでは、というミステリアスな展開も上々。最大の謎は、タイトルに即せば「真の詐欺師はだれか」。インパクトのある設定だ。が、ひとが自分自身もふくめてひとをあざむくとき、欺瞞を意識し正当化するための目標や理念が高ければ高いほど、その欺瞞には説得力があり、欺瞞とその隠蔽から生じる謎も蠱惑的になる。が、本書の場合、種明かしがはじまったあたりから次第に興がさめる。大山鳴動してネズミ一匹。およそ解決に値する謎ではなく、重大な欺瞞でもない。暗示的ですっきりしない結末も減点材料。ムーミン・ファンなら一読の価値あり、といったところか。