きのうは日曜日なのに〈自宅残業〉。疲れた。きょうも手短にすませよう。
まず前回の訂正から。ヒロインの Sabine がロスを離れ、Nebraska に住む義理の母たちと同居しそうだ、と報告したが、これはぼくの勘違い。ただの一時的な訪問だった。ロスの自宅を処分するというくだりだけで早トチリしてしまった。
滞在先の家は雪深い田舎町にある。ぼくが読んでいるペイパーバック版の表紙は、雪の中の魅力的な一軒家の写真。というわけで、いよいよ本書の核心部分が始まったようだ。
実際、驚くべき事実が暴露される。亡き夫 Parsifal が家族のことをいっさい隠し、いわば自分の過去を葬り去っていた理由が明らかになったのだ。がしかし、これは伏せておくべきだろう。
差し障りのないところで言うと、Sabine は思いがけず自分の青春を追体験する。まだ無名だったころの若き魔術師 Parsifal が、これまた若い助手の Sabine ともども、ジョニー・カーソン・ショーに晴れて出演。それを義理の母がビデオに録画していたのだ。
このときの二人がマジックを演じる場面がすばらしい。現在と過去が一瞬のうちに交錯する鮮やかなカットバックである。これ以前にも、現在の出来事の中に生前の Parsifal の描写がすっと紛れこむシーンがいくつかあり、さすが Ann Patchett はテクニシャンだなと感心していたが、ここはその最たる例だろう。俄然、おもしろくなってきました。
(写真は、宇和島市神田川原(じんでんがわら)にある、前回アップした旧称・土橋(どばし)付近。左手の家に昔の面影はないが、同じところに友だちが住んでいた。暑い夏の日盛りにいっしょに遊んだものだ。ところが、いつのまにか姿を見せなくなった。あまり気にも留めなかったが、しばらくして、「あの子、ニホンノーエンで死んだんよ」という話を耳にした。ニホンノーエンが日本脳炎のことだとわかったのは数年後。友だちが亡くなった年か翌年のお盆だと思うが、ご両親が家の前の路上でお迎え火を焚いていた。その意味がぼくはよくわからず、ただ興味をもって近づいて行くと、お父さんが怖い顔をして、ぼくを手で追い払った。この道には、そんな苦い思い出がある)