ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

L.J. Ross の “Holy Island”(1)

 イギリスのベストセラー作家 L.J. Ross の Ryan 警部シリーズ第1作、"Holy Island"(2015)を読了。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆] クリスマスの数日前、イギリス北東部の観光地ホーリー島で凄惨な連続殺人事件が発生。たまたま当地に滞在していた休職中の警部ライアンが職務に復帰、捜査を開始する。その協力をライアンの上司から要請されたのが島の出身者で、異教信仰に造詣の深い宗教学者アンナ。島の名所の修道院跡で発見された最初の被害者、若い娘の死体には奇妙なしるしが刻され、どうやら彼女は宗教儀式の生け贄になったらしい。ライアンの休職には精神的な理由があり、アンナもひさしぶりに再会した姉との確執に苦しんでいる。その姉にこんどは魔の手が……。風光明媚な観光地、センセーショナルな儀式殺人、心に傷のある美男美女の出会い。そんな要素を盛りこめば、たしかにベストセラーにならないわけがない。適度に謎解きのおもしろさもあり、とりわけ犯人逮捕にいたる最後の対決シーンは迫力満点、大いに楽しめる。ライアンの指示に反してアンナが勝手に行動した結果、あやうく命を落としそうになるのも定石どおりだがサスペンスフル。が、謎のカルト教団が暗躍するのはいいとして、ほんまかいな、とつい疑いたくなるのは、設定が突飛すぎて人物描写も平板だからだ。などと突っこまず、軽く読み流せば時間つぶしにはもってこいかもしれない。