ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(1)

 きのう、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(2017)を読了。Ward としては、"Salvage the Bones"(2011 ☆☆☆★)以来、2度目の同賞受賞である。ひと晩寝かせたところで、はて、どんなレビューになりますやら。

Sing, Unburied, Sing: SHORTLISTED FOR THE WOMEN'S PRIZE FOR FICTION 2018

Sing, Unburied, Sing: SHORTLISTED FOR THE WOMEN'S PRIZE FOR FICTION 2018

[☆☆☆★★] 家族の死。それはジョージ・スタイナーの悲劇論から離れれば、現代における最大級の悲劇と言えるかもしれない。と同時に、それはギリシャ悲劇の時代から語り継がれてきた永遠のテーマでもある。この古くて新しいテーマを現代の作家はどう描けばよいのか。本書は、その答えのひとつである。舞台はミシシッピ州の田舎町。黒人の老婦人が死の床についている。その娘と孫息子のジョージョーが交代で語り部となり、そこへときどき亡霊の声が混じる。娘には亡き兄の姿が見え、ジョージョーは伯父のほか、祖父が若いころに死別したはずの友人も目にする。各人の回想にくわえて亡霊たちの登場により過去と現在が交錯するマジックリアリズム。それが上の答えなのだ。ガルシア=マルケスなどの洗礼を受けた目で見ると決して斬新な技法ではないが、本書の場合、その試みはかなり成功している。祖母の死はもちろん、それを契機に過去の死者がよみがえることで一家の悲しみが深まり、死者とのふれあいを通じて自分の立場、家族の絆を思い知らされる。幕切れで、亡霊たちに囲まれながらジョージョーの幼い妹が歌を唄う場面は全編の象徴。その妹がジョージョーにまとわりつく姿は、たまらなく切ない。