ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Patrick Modiano の “Villa Triste”(2)

 ゆうべ、愛媛の田舎からやっと帰ってきた。久しぶりに長い帰省とあって、本を3冊バッグに忍ばせたのだが、最初の、それもいちばん薄いやつをまだ読みおえていない。

 今回は、母が新しい高齢者介護施設に引っ越しすることになり、その手伝いが帰省の主目的。ほかにもケアマネと会ったり、家の内外や墓の掃除など、ほんとに忙しかった。おまけに、ひと息ついたところで出かけた渓谷でスズメバチに刺される始末! 行き帰りのJRの車内でも爆睡だったし、とてもじゃないが、落ち着いて本を読める状態ではなかった。
 閑話休題。表題作は、今年のブッカー賞最終候補作で唯一読み残していた Esi Edugyan の "Washington Black" が届くまで〈場つなぎ〉のつもりで取りかかった。ところが結局、同書は未着。Amazingなんとかという代理店経由で注文したのだが、この店は文字どおりアメージングで、調べると最近、ぼくとおなじような目に遭ったお客がずいぶん多い。こんなにひどい店は初めてだ。
 再度、閑話休題。Patrick Modiano は大好きな作家だ。といっても、ぼくは2年前、ジャケ買いで "Paris Nocturne"(2003 ☆☆☆☆)を読むまで、彼がノーベル賞作家であることさえ知らなかった。

 ついで今年の2月、冬ソナの原作とも知らず "Missing Person"(1978 ☆☆☆★★)を読み、 

さらに3月、"Suspended Sentences"(1993 ☆☆☆★★★)、"Dora Bruder"(1997 ☆☆☆☆)、"In the Cafe of Lost Youth"(2007 ☆☆☆★★)と、立て続けに3冊読了。いまではすっかりモディアノ中毒にかかっている。 

 だから本書 "Villa Triste"(1975 ☆☆☆★★)も、なんの予備知識もなく、ただ Modiano の作品だからというだけで手を伸ばした。「あの夏、僕は18歳。アルジェリア戦争の災禍を逃れ、遠くにスイスを望む湖畔の町で無為の日々を過ごすうち、美しい娘と出会った……」。
 いいですなあ。恥ずかしながら、ぼくは昔から、この手の話にヨワい。いまやもうハゲで白髪のおじいちゃんなのに、こういう本を読んでいると、心はついあの夏の日に戻ってしまう。
 とはいえ、「定番の話だが、それが叙情の名手モディアノの筆になると、たまらなく切ない。カフェやホテル、別荘など街の風景が記憶の霧の彼方から浮かび上がり、さびれたいまの景色と二重写しになる」。
 あれま、こんなふうに拙文をコピペするくらいなら、レビューをぜんぶ再録したほうがよほどましですな。失礼。 

 あ、それからきょう、遅まきながら〈はてなブログ〉に切り替えました。よく分からないまま工事中につき、レイアウトは随時変更するかもしれません。
(写真は、予讃線西条駅付近からながめた石鎚山。今回の帰省で撮影)

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