ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

William Faulkner の “The Town”(1)

 このところボチボチ読んでいた Faulkner の "The Town"(1957)をやっと読了。周知のとおり、the Snopes trilogy スノープス三部作の第二巻である。さっそくレビューを書いておこう。 

The Town (Vintage International)

The Town (Vintage International)

 

[☆☆☆★★] 前半が面白い。南北戦争から約半世紀後、南部の町ジェファーソンを舞台に発電所の資材横領や、美女をめぐる恋の鞘あて、レトロなポルノ上映、ラバの暴走など、時にはホラ話に近いようなドタバタ喜劇が連続。生ぐさい欲望と欲望の衝突はこっけいそのものだが、そんな大人たちの没道徳的な姿を、純粋無垢な少年の目を通して描いたところにフォークナーの偉大さがある。彼が理想と現実に引き裂かれていた証拠だからだ。一方、後半に入って主人公フレムが才覚を発揮、奸計を弄して銀行の頭取に成り上がるまでの前頭取との暗闘は、フレムの妻と前頭取との不倫というメロドラマ的な興味もあるものの、総じて楽屋話を聞くようで迫力に欠ける。時代が激変するなか、新興勢力を代表するフレムは現実主義者だが、守旧派であるべき前頭取はメロドラマの主役というだけで理念がない。ゆえに真の意味でフレムとの対決もない。また、フレムの妻に思いを寄せる弁護士は理想主義者だが、彼がフレムと対峙する場面もほとんどない。従って、フレムの妻の破滅は新旧両勢力の衝突によるものでも、理想と現実の矛盾がもたらしたものでもない。現実を知りつくし、男たちを手玉に取っていたはずのフレムの妻が現実に呑み込まれて破滅する。編者の後注によれば、フォークナー自身、本書の執筆後に「胸を痛め、泣きそうになった」とのことだが、それがフレムの妻の末路を思いやっての話だとしても、共感の涙は流しにくいかもしれない。