ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Yiyun Li の “A Thousand Years of Good Prayers”(2)

 え、あんた、まだこれを読んでなかったんですか、という声が聞こえてきそうですね。まことにお恥ずかしい次第だが、ほかにも読み洩らしている名作傑作は山ほどあり、これから少しずつ遅れを取り戻していくしかない。
 さて、Yiyun Li の作品を読むのは "Gold Boy, Emerald Girl"(2010)以来2冊目。同書は2011年のフランク・オコナー国際短編小説賞の候補作である。このときの受賞作は Edna O'Brien の "Saints and Sinners"(2011)だったが、ぼくの評価は☆☆☆★★。昔のレビューを読み返しても、どんな話が収録されていたかサッパリ思い出せない。
 ところが、"Gold Boy, Emerald Girl" のほうは☆☆☆★★★。「現代中国の市井の人々の哀歓を静かな筆致で描いた好短編集」で、こちらは中身もうっすら憶えている。ちなみに、同じく候補作だった Alexander MacLeod の "Light Lifting"(2010)は☆☆☆☆。たぶん好みの違いでしょうね。
 フランク・オコナー賞は、残念ながら2015年をもって廃止されてしまったが、ぼくは全11冊の受賞作のうち、今回の Yiyun Li 作品で8冊読んだことになる。わりとまめに追いかけているように見えるが、じつはそうでもない。2011年当時は、へえ、フランク・オコナー賞って文学賞があるんだ、というくらいの認識しかなかった。
 だから、Yiyun Li の存在も "Gold Boy, Emerald Girl" で初めて知った。第1回の受賞作が "A Thousand Years of Good Prayers" だという知識も得たが、どうやらかなり有名な作品らしい。じゃ、あとまわし! という持ち前のへそ曲がりで7年間も書棚のお飾り。数十年の積ん読本もあるので、これでもまだ早く片づけたほうだ。
 ぼくは知らなかったが、先ほど Wiki を調べると、第4話 "The Princess of Nebraska"(☆☆☆★★★)は同名タイトルで表題作(☆☆☆☆)と併せて映画化され、脚本を書いたのは Li 自身だとか。2話ともぼくの評価は高かったから、珍しく世評と一致したことになる。
 ほかに気に入ったのは、レビューで粗筋にふれた第5話 "Love in the Marketplace" と第8話 "Death Is Not a Bad Joke" で、どちらも☆☆☆★★。平均して☆☆☆★★という採点は世評より辛いはずだ。
 ぼく自身の好みが変わったのかもしれない。"Gold Boy, Emerald Girl" を読んだころのほうが、素直に小説を楽しんでいたような気がする。あ、それを言うなら、学生時代のほうがずっと素直でしたね。
(写真は宇和島市妙典寺の裏山)