ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Mario Vargas Llosa の “The Green House”(1)

 Mario Vargas Llosa の "The Green House"(1966)を読了。スペイン語の原題は "La Casa Verde"。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★★]「文化とは、ある国民の生きかたである」と述べたのはT・S・エリオットだが、このエリオットの定義に従えば、本書はまさしくペルーの国民文化を忠実に再現した作品といえよう。複雑にいり組んだ濃密な文体と、執拗なまでに繰りかえされるカットバックを通じて次第に浮かびあがってくるのは、過去と現在、文明と未開、聖と俗、生と死、愛と憎しみ、白人とインディオ、盗賊と官憲、男と女など、さまざまな対立要素が重層的に共存している社会の現実である。こうしたペルー社会の矛盾を、混沌をありのままに象徴しているのが娼館「緑の家」なのかもしれない。がしかし、館はけっして統一的な存在ではなく、人びとはそれぞれ強烈な個性を発揮し、対立と融和を繰りかえしながら生きている。同様に、複雑な叙述形式で語り継がれる断片的なシーンはやがていくつかの副筋を形成するものの、それがひとつの主筋にまとまることはない。本書の舞台と同じく、ちょうどアマゾンの源流のような分裂状態を呈した作品である。