ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Joyce Carol Oates の “Wonderland”(2)

 Joyce Carol Oates はほんとうに息の長い作家だ。ざっと50年のキャリアを誇り、おん年80歳で現役バリバリ。
 しかも、デビュー当時から現在にいたるまで終始一貫、評価の高い作品を書き続けている。それなのにまだノーベル賞を受賞していないとは、世界の文学界7不思議のひとつでは?(あとの6つは不明ですが)。
 などと与太を飛ばせるようになったのも、この Wonderland quartet をやっと読みおえたからだ。第1作 "A Garden of Earthly Delights"(1968 ☆☆☆☆★)を読んだのが5年前。それが Oates 初体験だったのだから、まことにお恥ずかしい次第です。
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 その前からずっと積ん読なのが "Middle Age"(2001)と "The Falls"(2004)。どちらもジャケ買いだったが、後者は2005年のフェミナ賞外国小説賞の受賞作だから、たぶんそれで話題となり、往年の名画「ナイアガラ」を思わせるカバーが目にとまったのではないかしらん。
 が、何しろ分厚い本だ。つい後回しにしているうちに、もうそろそろ読まなくちゃと思って Oates のことを調べてみると、上のとおり大作家と判明。その最初のピークが Wonderland quartet であることを知り、よし、これから先にと着手したのが5年前というわけだ。
 第2作 "Expensive People"(1969 ☆☆☆☆)と第3作 "Them"(1970 ☆☆☆☆★)は8ヵ月前、年末年始に読みました。そのときすでに退職が決まっていたので、いわば老後の生活にソフトランディングするための予行演習でした。
 というわけで、この第4作 "Wonderland" を読んだことにより、長年の宿題をひとつ片づけたことになる。冥途の旅の一里塚ですな。
 1968年からスタートした4部作。最後はさすがに息切れしたのかな、という印象も受けたが、それでも読み応え十分。1970年には "The Wheel of Love and Other Stories"(未読)がピューリッツァー賞候補作に選ばれている。この最初のピークはとんでもない高峰ぞろいだ。
 4部作の共通項のひとつは「貧乏白人の年代記」だが、ぼくのレビューからキーワードを拾ってみると、人間の「生々しい現実」、「時代を超えた真理」、「人間存在の断絶とその超克をめぐる葛藤」、「過酷なアメリカの現実」といったところ。なんだか似たり寄ったりの陳腐な評言だが、それでも Oates の作風はうかがえるものと思いたい。
 このあと、まだまだ Oates にはピークがある。"The Falls" もそのひとつだが、なんと今年は "A Book of American Martyrs"(未読)でロサンジェルス・タイムズ紙最優秀長編ミステリ賞を受賞。まるでもうバケモノですな。
 Oates 以外に目を向けると、ほかに有名な3部作、4部作をぼくはたくさん読み洩らしている。冥途からお迎えが来ないうちに少しずつ片づけたいものです。
(写真は、愛媛県吉田町立図書館。帰省のたびにバスから撮影するのだが、なかなかいいタイミングで撮れない。豪雨で大変な被害を受けた吉田町だが、先日のニュースによると順調に復旧が進んでいるそうだ)