ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"A Fable" 雑感

 諸般の事情でしばらく読書から遠ざかっていた。まず、腰を痛めた。原因はたぶん掃除のしすぎだろうが、ネットで調べると恐ろしいことが書いてある。とりあえずストレッチに励んだ結果、さいわい、いまではだいぶよくなったものの、まだ違和感がのこっている。
 腰を気にしながら活字を追いかけていると、やがてBGMにじっと聴きいることが多くなった。そのほうが楽だからだ。夜の部はクラシックで、「魔笛」がますます好きになった。昼の部で歌謡曲やj-POPをあれこれ聴いているうち、これを1枚のCDRに収めるとさぞ便利だろうなと思った。そこで曲の選定と編集に取りかかったが、とうてい1枚には絞り切れず、結局5枚、マイ・ベスト101が完成。これに相当な時間を要した。振り返ると、終活のひとつだったような気がする。
 内訳は、1曲目が並木路子の「リンゴの唄」(45)。こう書いて通じる人は、まちがいなく高齢者です。曲数としては60年代がもっとも多く、37曲。ついで70年代が28曲。ここまでがぼくのぎりぎり青春時代かな。そのなかからあえてベストワンを選べば、都はるみの「好きになった人」(68)。ついで青江三奈の「池袋の夜」(69)。自分でも意外な好みのような気がするが、それだけ年をとったということだろう。
 一方、映画はわりとまめに観ていた。英語圏のものでいちばん印象ぶかかったのは、久しぶりに観た "The Last Picture Show"『ラスト・ショー』(71)。スペイン製のブルーレイ盤で、版元がソニーのせいか日本語の字幕付き。ところが日本ではなぜか未発売(DVDのみ発売)。米アマゾンで発見した。画質は期待したほどではなかったけれど、それでもかなりいい。が、在庫最後の1枚だったので、いま確認するともはや入手困難のようだ。 

ラスト・ショー [DVD]

ラスト・ショー [DVD]

  • 発売日: 2016/07/02
  • メディア: DVD
 

  "M"(31)も "Manon"『情婦マノン』(49)も再見だったが、やっぱりすごかった。どちらも海外ブルーレイ盤で字幕は英語。古い映画なのに画質は十分満足できる。そんな名画ソフトを英米アマゾンでいろいろ探索するのにも時間がかかった。
 というわけで、このところ読書とはほとんど無縁の生活。寝床で読んでいる『マチネの終わりに』(文庫版2019)にいたっては、読みはじめて1年もたつのにまだ途中。あまり面白くない。
 それほどひどいペースではないが、Faulkner の "A Fable"(54)も、きょうからやっと再着手。メモを見ながら読んでいるうちに、粗筋や人物関係を少しずつ思い出した。これ、ひょっとしたら現代版、いや20世紀版キリストと12使徒の物語かもしれない。第一次大戦末期の西部戦線で、突撃命令に従わなかった仏軍連隊の兵士が13人。そのリーダーの伍長が「奇跡のひと」のように描かれているからだ。
 軍法会議で証言した将校たちによると、伍長はたしか4年前に戦死したはず、いや、その当時は慈善活動に従事していた、いやいや、1年前に大西洋上で水葬に付したはず、などと過去の経歴が矛盾と謎に満ちている。
 ただ、これがおそらく主筋と思われるのに、物語は単純に直線的には進まない。軍法会議をつかさどる老将軍をはじめ、いろいろな人物にかんする説明が、ぼくには脱線のように感じられるほど、えんえんとつづく。その意味はいくぶん分かってきたような気もするが、とにかく退屈。いきおい忍耐を強いられ、つい音楽や映画のほうに流れてしまうのです。