けさ弟からの電話で知ったのだが、ぼくのふるさと愛媛県宇和島市でも初めて新型コロナウィルス感染者が出たらしい。京都から帰ってきた大学生という話だが、なにしろ商店街でも昼間からシャッターを下ろしている店が目だつ、元からみんな外出自粛しているような街のこと、都会との接触だけが気がかりだった。ワクチンや特効薬が開発されるまで、ぼくもしばらく帰省は望めそうもない。
(写真は宇和島市立病院。手前は弟オススメのかまぼこ店)
閑話休題。このところ2008年の全米図書賞受賞作 Peter Matthiessen の "Shadow Country" を読んでいる。当初の予定では先週あたり読了のはずだったが、みごとに挫折。途中でつまらなくなり、一気にペースが落ちてしまった。
本書にかぎらず、アメリカの有名な文学賞の受賞作・候補作には超大作が多い。そうとは知らず、手元に届いた本の分厚さに戦意喪失、以来積ん読というパターンがよくあり、これもそのひとつだった。
ただ受賞当時、合冊本なので大部になったという記事を読んだ憶えがある。実際、前付によると、第1部 "Killing Mister Watson" は1990年刊、第2部 "Last Man's River" は1997年刊、第3部 "Bone by Bone" は1999年刊。Author's Note によれば、本書はこの The Watson Trilogy を一冊にまとめ、さらに加筆修正したリメイク版とのこと。えらく長いわけだ。
主な舞台はメキシコ湾に面したフロリダ半島南端部。19世紀後半から20世紀初期にかけての話で、マングローブの原生林など未開の地が広がり、ちらほらある開拓村にネイティヴ・インディアンとの混血や、元奴隷の黒人、白人のアウトローたちが登場し、実質的に「最後のフロンティア」をめぐる小説である。
主人公は E. J. Watson という伝説的人物。第1部では、召使いや親類縁者、隣人、保安官など、つぎつぎに話者が交代しながら、Watson が農園主として成功を収める一方、早撃ちの名人でもあり、ウソかマコトか殺人の嫌疑を何件もかけられ、次第に恐怖のレジェンドとなっていく過程を物語る。この視点の変化と構成の妙、それから決闘というかリンチ殺人というか、とにかく終幕が緊迫感たっぷりで大いに盛り上がる点を買って、☆☆☆★★。
いけないのは第2部。Watson の息子 Lucious が主役となり、上の事件が住民たちの言うとおり正当防衛によるものか、それともリンチだったのか、関係者を訪ね歩いて真相解明に取り組む。前巻のような山場もなく、後日談の域を出ない。これを読まされているうちに眠くなり、気がついたらBGMのCDが最後の曲ということが何回もあった。そこで評価も☆☆☆。
第3部は南北戦争直後、Watson の少年時代から始まる彼自身の自伝で、最初はやはり眠かった。が、暴行を繰りかえす父親を Watson 少年がぶちのめしたり、大人になってから名うての無法者を成敗したりと、適度に山場があり、いまは少しずつ目が覚めてきたところ。まだ途中だが☆☆☆★★。
第1部ともども、面白いくだりもあるのに点数を増やせない理由については、今後の展開を見てから明らかにしよう。