ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

David Constantine の “Tea at the Midland and Other Stories”(1)

 途切れ途切れに読んでいた David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)をやっと読了。2013年のフランク・オコナー国際短編賞の受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。

Tea at the Midland: And Other Stories

Tea at the Midland: And Other Stories

 

[☆☆☆★★★] 巻頭の表題作を読んだとき、「白い象のような山々」を思い出した。舞台は海辺のレストラン。すこぶる緊密な文章の行間から、茶を飲む男女の凝縮された感情が少しずつにじみ出てくる。やがて明らかになるふたりの複雑な関係。こんなふうに描かれた別れほど切ないものはない。「島」もいい。男がひとり、秋から冬にかけて離島に住みながら、二度と会わぬ女に手紙を書きつづける。荒涼とした海の風景、闇のなかの沈思黙考、島民たちとの軽いふれあいなどに、男の揺れ動く心理が深くしみ込んでいる。ほかにも、妻をなくしたばかりの男が老夫婦の日常生活に接する「カールトン氏」など、総じて孤独と喪失、人生の悲哀をテーマにしたものが多いが、寒々とした廃校で男たちがクリスマスイヴを祝う「ゴート」や、古い墓地を美園に改造しようと女が奮戦する「イーヴ」のように、ユーモアたっぷりの作品も混じっている。繊細かつ鋭敏な感覚で人物と事物、風景の細部を丹念に練りあげながら話を進めるため、展開はどれも超スロー。劇的な事件はほとんどひとつも起こらない。が、彫琢された一言一句を玩味しているうち、琴線にふれるものを発見したときの悦びは大きい。〈行間の美学〉の結晶ともいうべき短編集である。