ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Audrey Magee の “The Colony”(2)

 きょうから20日ぶりにジム通い。思ったより走れ、筋トレもいつものメニューをこなせた。
 それはいいのだけど、この1週間は長旅の疲れのせいか、ふだん以上にぐうたら生活。身体だけでなく、頭のほうもそろそろ動かさないと。
 そのぼんやりした頭で読んでいたのは、まず寝床のなかで『流浪の月』。どんな話かすっかり忘れていたので、もういちど最初から読みなおし、やっと新しいページに入ったところ。カタカナがやたら多いと思うのは気のせいか。それと、いっぷう変わった人物関係も現代文学の趨勢なんでしょうな。
 英語のほうは、"Jakob von Gunten" を相変わらずボチボチ読んでいた。これは10年ほど前だったか、夭折した英文学徒T君から、「Robert Walser はいいですよ」と教えてもらった本なので、ほんとうはもっと気合いをいれて読まないといけないのだけど、上の事情でなかなか進まない。あともう少し。がんばらなくては。
 閑話休題。いまイギリス現地ファンの下馬評をチェックすると、表題作はもっか、今年のブッカー賞レースで1番人気。ロングリストの発表前、ゲートイン直前からの勢いがそのままスタートダッシュにつながっているようだ。

 ぼく自身、ブッカー賞関連で☆☆☆☆を進呈したのは、最近ではあまり記憶にない。急遽チェックしたところ、受賞作では、2011年の "The Sense of an Ending" 以来はじめてだった。

 最終候補作はというと、あ、そうか、2019年の "Quichotte" も星4つだった。

 ともあれ、ブッカー賞の候補作を追いかけていると、とりわけアメリカ馬も参戦するようなってからは、英米文学の最新の秀作、評判作が手っとりばやく読める。のはずなのだけど、意外に凡作を読まされることもある。とそんな個人的体験からいうと、今年はひょっとしたら豊作かもしれない。"The Colony" につづいて読んだ "Small Things Like These" も、なかなかよかったからだ。

 ふたつの作品に共通していえるのは、多分にぼくの独断と偏見にもとづく感想なのだけど、どうも昨今の国際情勢が背景にあるのでは、少なくとも、それを連想させる内容をふくんでいるのでは、と思えることだ。
 むろん、創作時期そのものは、おそらく去年以前と考えられるので、ぼくの感想はまさしく独断と偏見なのだけど、たとえば、"The Colony" に出てくるゴーギャンの名画のタイトル "Where Do We Come From? What Are We? Where Are We Going?" を目にして、ウクライナ侵攻問題に思いを馳せない、なんてことは〈ボク的〉にはありえない(このいいかた、きっと久しぶりに日本の現代文学も読んでいるせいですな)。
 いや、知ったかぶりはよくない。そんな作品をゴーギャンが描いていたとは、じつは本書を読むまで知らなかった。ゴーギャンって、タヒチかどこか南の島でハダカの女のひとを描いた画家、くらいの認識だった。(この項つづく)
 とここまで書いたあと、一杯やりながら『おしゃれ泥棒』をブルーレイで再見。いい映画を観ると、ほんと、元気が出てきますね。