長い、長すぎる。
400ページちょっとの本だから超大作ではないし、現代の作品ではむしろふつうの分量といえるけど、それでも長い。
そう感じるわけは、ひとえに、本書の主な舞台、南仏の田舎に居住するカルト集団的なコミューンの教祖、Bruno Lacombe の瞑想が散漫だからだ。
冒頭 Bruno は、組織の実務リーダー Pascal Balmy にメールでネアンデルタール人の話をする。Neanderthals were prone to depression, he said. / He said they were prone to addiction, too, and especially smoking.(p.3)
ついでホモ・サピエンスが顔を出すなど(p.8)、以後、こうした先史時代の人類の話題はなんどもくりかえされるが、最初のうちこそ興味ぶかかったものの、やがて飽きてしまった。学術的な意義はさておき、上の引用例でわかるとおり、だからどうした、とミもフタもない感想しかもてなくなったからだ。
そこで眠気ざましにパラパラめくっていたのが、『ビジュアル版 46億年の地球史』。これはスグレモノです。
ともあれ、「ブルーノは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの比較、人類の進化と文明の進歩、戦争の悲惨、資本主義の功罪などを論じながら、よりよい未来のために現代人が目ざすべき道を模索する」。
というのも、こんな一節があるからだ。All attempts to categorize people, Bruno said, whether by astrology or anthropology or blood, answer to a root desire: to know the future. And by knowing it, we hope that we might prepare for it, or even control it. / ... He had looked to species to locate where we'd gone wrong. He had believed it was Better Before, ... / He had been vaguely aware of a flaw in his thinking. ... / Was it Better Before? I honestly can't say, he wrote. In looking back, what I really wanted was to know how we navigate with the knowledge we have. What future do we imagine for our present?(p.367)In my assessments, he said, I have lost my bearings, and I will have to find new ones.(p.368)
虫食いの引用につき、わかりにくい文脈でスミマセン。ただ、「散漫な瞑想」の一端はうかがい知れよう。とりわけガクっときたのは、最後のワン・センテンス。なんじゃこれは!?
せっかく眠い目をこすりながら、このくだりをはじめ、「人類の進化と文明の進歩、戦争の悲惨、資本主義の功罪」など、しち面倒くさい話につきあってきたのに、あの努力はいったいなんだったのか。「高尚なトピックスに発展したわりには竜頭蛇尾」もいいところだ。
ここで本書カバーの折り返しに目をやると、Beneath this taut, dazzling story ... lies a profound treatise on human history. という紹介が載っていた。profound ですか。too profound じゃないかしらん。
と、やけにクサしてしまったけれど、Bruno の瞑想をほとんどカットすれば、たしかにこれは taut, dazzling story。「ミステリ部分はけっこう面白い」。そちらの粗筋に大半の紙幅をさいた折り返しの記事は、ま、版元の商策ですな。(つづく)