ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jayne Anne Phillips の “Night Watch”(2)

 しばらく前から、去年の国際ブッカー賞受賞作、Jenny Erpenbeck の "Kairos"(2021, 英訳2023)に取り組んでいる。
 Erpenbeck(1967 - )はドイツの作家で、彼女の作品は初読かと思ったら、読書リストを検索したところ、"The End of Days"(2012)を読んでいた(☆☆☆★)。同書は2015年の Independent Foreign Fiction Prize 受賞作、および2016年の国際IMPACダブリン文学賞最終候補作。
 その旧作と "Kairos" にはどうやら共通点があるようだ。両書とも、「斬新なアイデアも最初のうちこそ効果的だが(やがて)パターンが鼻につき、飽きがくる」。
 もちろんそれぞれのアイデアはまったくべつなのに、途中で退屈してしまうところが同じとは、上のレビューを読みかえすまで気づかなかった。Erpenbeck とは相性がわるいのかもしれない。
 ともあれ、そんな事情でペースは大幅にダウン。そこへ毎日のように、近所に住んでいる孫のショウちゃん(5歳)が、「ジージー、ポーカ」とやってくる。ポーカとはポーカーのことで、正月に教えてやったところ、すっかりハマってしまったものらしい。
 さて表題作。これは既報どおり、ぼくの2024年ベスト作品。おもしろかった!

 といっても、じつは看板に偽りありで、年間ではなく下半期か第4四半期ベスト。去年は古典巡礼に出かけている日のほうが多かった。
 その半期だか四半期だかに読んだ本をふりかえると、大なり小なり、なんらかのかたちで愛(と死)が描かれていたようだ。古典的かつ永遠のテーマのひとつで、浜の真砂はつきるとも世に愛のタネはつきまじ。上の "Kairos" にしても同様だ。 
 ただ異なるのは、タネというか元ネタをいろいろな食材や調味料と混ぜあわせ、いかにおいしい料理をこしらえるか。シェフの腕の見せどころでもある。
 その点、"Night Watch" はシンプル・イズ・ベスト。「『苦難を乗りこえる力は忍耐と勇気』という単純な真実をあらためて教えてくれる感動作である」。
 むろん本書でもあれこれ工夫はほどこされているのだけど、メインは直球勝負。変化球を投げてすっぽ抜けたのが去年のブッカー賞受賞作 "Orbital" で、同賞最終候補作の "Stone Yard Devotional" や "Held" にしても、ひねりすぎてボール。やっぱり、ストレートをバシっと決めてくれたほうが痛快ですな。
 いかん、ぼくも駄文をひねっている。わかりやすくいうと、上の三作は語り口に凝ろうとするあまり、かんじんの語るべきことが(やや)お留守。一方、"Night Watch" からは作者の熱い思いがよく伝わってくる。
 そういえば、Jayne Anne Phillips の旧作 "Lark and Termite"(2009 ☆☆☆★★)も「深い感動を呼ぶ」佳篇だった。

 今回の "Night Watch" は、それをさらに上まわる出来ばえ(☆☆☆★★★)。ううむ、ちとキビしすぎる採点だったかな。(つづく)

(写真は、ぼくのデスクめがけて急降下する零戦のプラ模。ぼくの亡父は特攻隊の生きのこりだったので、いつか製作したいと思っていた。いまは艦船模型にハマり、おかげで読書時間は激減)