ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2024年全米批評家協会賞発表

 いささか旧聞に属するが、去る20日、今年(対象は昨年)の全米批評家協会賞が発表され、小説部門で Hisham Matar の "My Friends"(2024 ☆☆☆★★)が栄冠に輝いた。

 Hisham Matar(1970 - )はアメリカ生まれ、イギリス在住のリビア系作家で、デビュー作は2006年のブッカー賞最終候補作 "In the Country of Men"(2006 ☆☆☆★★)。

   "My Friends" は2024年のオーウェル賞受賞作でもあり、また同年のブッカー賞一次候補作、全米図書賞最終候補作でもあった。
 その全米図書賞では Percival Everett の "James" (2024 ☆☆☆★★)の後塵を拝していただけに、今回の受賞でみごと雪辱を果たしたことになる。ぼくもこんどは "My Friends" に花を持たせてやりたいと願っていたので、この結果にはおおいに満足。
 雪辱といえば、去年のブッカー賞はあの駄作なんぞより、いっそ "My Friends"(もしくは "James")が受賞してもよかったのではないか。それがショートリスト落選といったあたりから、民意(現地ファンの声)に反していたような気がする。
 その駄作は技巧的には非常に凝ったものだったけれど、"My Friends" は直球勝負。「昨今の国際情勢にも通じる政治問題を扱いながら政治一辺倒ではなく、むしろ政治が友情や家族愛、恋愛と深くかかわる現実をみごとに描いた佳篇である」。
 去年の三大収穫は "My Friends" と "James"、そして(刊行は一昨年だが)ピューリツァー賞受賞作、Jayne Anne Phillips の "Night Watch"(2023 ☆☆☆★★★)だったのではないか。