ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Andrew Miller の “The Land in Winter”(2)

 本書はロングリストの段階からさほど興味がなかった。Andrew Miller という名前には見おぼえがあり、読書リストを検索したところ、2011年のコスタ賞受賞作 Pure(2011)がヒット。拙文を読んで凡作ぶりを思い出した(☆☆☆★)。

 いちばんガックリきたのは、「せいぜいフランス革命前夜の裏話」で、しかも「べつにフランス革命が背景でなくてもいいのでは、と思え」る内容だったこと。歴史上の大事件を扱うからには、たとえ裏話でも、なにがしかの新情報、新解釈がなければ意味がない。「コミカルだったりサスペンスフルだったり、けっこう楽しめる」だけではダメですな。
 そんな旧作の印象がトラウマになり、ああ、あの Andrew Miller か、こりゃアカン。というわけで新作をパスしようと思ったら、なんとショートリストにのこり、そのうえ現地ファンの評価もけっこう高い。いったい、どうなっとるねん。
 しかし最終候補作となった以上、もはや無視するわけにもいかず、仕方なく手に取った。
 予想的中! ブッカー賞の総括記事で述べたとおり、やっぱり Andrew Miller は「人間の内面を深く掘り下げるタイプの作家では」ありませんでした。
 おまけに、重大な史実を軽く扱うという悪癖も治っていなかった。「第二次大戦の爪痕や、ナチス強制収容所への言及にしても添えものにすぎず、掘りが浅い」。
 ただ、情景描写や作品構成の点では明らかに進歩している。「1960年代の初め、雪に閉ざされたイギリス西部ブリストルの近郊の村。精神病院の患者の自殺で幕をあけ、暗い冬のミステリアスな雰囲気に惹かれる」。「さりげない詩的な描写にしみじみとした味わいがある」。「(主要人物)四人の思いが最後、ひとつに収斂する展開もみごと」。
 ゆえに、上の記事からふたたび引くと、「読み物としては The Land in Winter が(最終候補作のなかで)いちばん面白かった」。
 「が、それだけだ」。上の自殺事件にしても「本篇とはほとんど無関係」。けっきょく本書は「さりげない詩的な描写」でその場の雰囲気を盛り上げるだけの「皮相な雰囲気小説」にすぎない。
 いやはや、酷評でスミマセン。でも長所はひろったつもりです。(了)

(年の瀬につき「メサイア」を聴いたのがきっかけで、古楽をよくBGMに流すようになった。ヘンデルはおおらかな曲風で、心がなごみますな)

ヘンデル:フルート・ソナタ集

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