この本を「電車やバスの中で読むときは、人に変な目で見られないよう気をつけないといけません」ときのう書いたばかりだが、ぼく自身、きょう仕事帰りに歩きながら読んでいる(ぼくの特技です)うちにクスクス笑ってしまい、通りかかったオバサンにじろっとにらまれてしまった。随所にコミカルな場面、ユーモアたっぷりのセリフがあり、とても楽しい。けっこう長い小説なので、ちょっと胃にもたれるのが玉に瑕だが、これはたぶん、ぼくの体力不足のせいでしょう。
奇想天外なプロット、ユーモアあふれる筆致にくわえ、きょうは第3の美点として、構成の巧みさを挙げておきたい。少しだけネタを割ると、主人公の百歳の老人 Allan は、ひょんなことからギャングの一味につけねらわれ、また一方、警察も老人の捜索を開始する。それゆえ、老人、ギャング、警察という3つの視点から話が進み、変化に富んだ展開となっている。
さらにまた、老人の子供時代からの出来事も年代記風に綴られる。なにしろ百歳の老人ということで、その年代記はさながら、20世紀の歴史を駆け足でおさらいしているようなものだ。駆け足なのでその歴史観は図式的なきらいはあるが、おさらいといっても勉強ではなく、ああ、そんな大事件がありましたなあ、という程度だから、目くじらは立てないほうがいい。
まず Allan の父親がロシア革命を体験。つづいて Allan 自身、スペイン内戦にかかわりフランコと親交を結ぶ。以下、言葉をかわした相手は、出会った順にトルーマン、蒋介石の妻・宋美齢、毛沢東の第3夫人・賀子珍、ベリヤ、スターリン、チャーチル、金正日、金日成、毛沢東、ド・ゴールなどなど。彼らとどこでどう知り合ったかは読んでのお楽しみだ。上の〈現代編〉ともども、荒唐無稽な筋立てとユーモアが特色である。
さてもう終盤だ。どんな結末になるんでしょう。