ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ピューリツァー賞

Herman Diaz の “Trust”(2)

ロンドン時間で21日、今年のブッカー賞ショートリストが発表された。the Mookse and the Gripes における候補作の人気ランキングはつぎのとおり(4/5は集計方法のちがいによる)。1, Prophet Song by Paul Lynch2, Study for Obedience by Sarah Bernstein3,…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(5)

Siân Hughes の "Pearl"(2023)を読んでいる。なかなかおもしろい。 手に取ったきっかけは、先月初め The Mookse and the Gripes のブッカー賞関連のスレッドで、イギリス人の文学ファン Paul Fulcher 氏のこんなコメントを目にしたからだ。Well I have rea…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(4)

前々回、「細部がよく書けている作品に駄作はほとんどありません」と大見得を切ったばかりなのに、あれま、"Trust"(2022)にはガッカリ。さすがに駄作とはいわないけれど、秀作になりそこねた水準作だった(☆☆☆★)。 一方、表題作はといえば☆☆☆★★。二冊同時…

Herman Diaz の “Trust”(1)

のどの痛みがだいぶ和らいできた。おかげで読書のペースも上がり、きのう、今年のピューリツァー賞受賞作、Herman Diaz(1973 - )の "Trust"(2022)をやっと読了。 Diaz は "In the Distance"(2017)でデビュー(未読)。それが2018年のピューリツァー賞…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(3)

旅行前、もう二週間近く前からのどが少し痛く、きのうの午後には微熱も。きょう桔梗湯を処方してもらったが、かかりつけの先生によると、一日ぶん三袋とも小さな魔法瓶(小型ペットボトル)にいれて水または白湯で溶かし、よく混ぜたものを少しずつ、うがい…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(2)

行きはよいよい、帰りはこわい。ゆうべ、やっとのことで九州・四国旅行から帰ってきた。 羽田発博多行きの飛行機に乗ったのが10日。台風6号の影響で条件つき飛行ということだったが、ぶじ着陸。博多市内の有名ラーメン店に直行し、長蛇の列にならんで待って…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(1)

諸般の事情で長時間の読書、ブログとも夏休みだった。年金生活といえば毎日が夏休みのようなものだけど、それでもあれこれ雑用に追われ、けっこう忙しい。きのうもジムで走っていたら、三番めの孫、アカリちゃんをちょっと見ていて、という連絡が入り、予定…

2022年ぼくのベスト小説

前回の記事をアップしたあと最寄り駅近くのジムに出かけたら、玄関先に大きな門松が飾ってあった。とうに古稀をすぎたぼくには、門松や冥途の旅の一里塚というわけだが、きょうは大みそか。大みそか冥途の旅の道連れ本となるかどうかはさておき、毎年恒例の…

Joshua Cohen の “The Netanyahus”(2)

なんでやねん! "The Colony" がブッカー賞ショートリスト落選とは! 下馬評ではロングリストの発表前から1番人気だっただけに、ぼく同様、この結果にびっくりした現地ファンも多かったようだ。いったい、なにが起きたのだろうか。 とそう疑いたくなるのは…

Joshua Cohen の “The Netanyahus”(1)

今年のピューリツァー賞受賞作、Joshua Cohen の "The Netanyahus"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Netanyahus: An Account of a Minor and Ultimately Even Negligible Episode in the History of a Very Famous Family 作者:Cohen, …

2021年ぼくのベスト小説

今年ももう大晦日。いつもぼんやり過ごしているうちに、いつのまにか年間ベスト小説を選ぶ日が来てしまった。 家の大掃除がおわったところでEXCELの読書記録をながめると、昔の大作を片づける、という新年の目標は春ごろに早くも挫折。以後、ピューリツァー…

Donna Tartt の “The Goldfinch”(2)

今年ももうあと3ヵ月足らず。年始にぼんやり立てた読書計画の狂いが気になってきた。2000年以降の有名な作品、それもなるべく大作巨編を片づける、というのが目標のひとつだったのだけど、2月から4月にかけて、"The Amazing Adventures of Kavalier & Cla…

Donna Tartt の “The Goldfinch”(1)

2014年のピューリツァー賞受賞作、Donna Tartt の "The Goldfinch"(2013)を読了。周知のとおり、これは2019年に映画化されたが日本では未公開。ただし Amazon Prime Video では鑑賞できるようだ。邦題は『ザ・ゴールドフィンチ』。さっそくレビューを書い…

Louise Erdrich の “The Night Watchman”(2)

Louise Erdrich を初めて読んだのは、もう15年くらい昔のことだ。いま思い出すと、たしかそのころはジャケ買いにハマっていて、なにかの作品の関連本を検索しているうちに魅力的なカバーを見かけると、内容もたしかめず即買い。そんなふうにして出会ったのが…

William Faulkner の “The Reivers”(2)

いまでこそ、「なにから読むか、フォークナー」などと気どったタイトルの記事を本ブログに載せているが、じつは Faulkner を英語で読むようになったのは2000年の夏から。そう遠い昔ではない。 高校時代には翻訳で『八月の光』その他を読んでいたものの、大学…

Louise Erdrich の “The Night Watchman”(1)

今年のピューリツァー賞受賞作、Louise Erdrich の "The Night Watchman"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Night Watchman: Winner of the Pulitzer Prize in Fiction 2021 作者:Erdrich, Louise Little, Brown Book Group Amazon [☆☆☆…

William Faulkner の “The Reivers”(1)

William Faulkner の最後の長編 "The Reivers"(1962)を読了。Faulkner は本書の刊行後に他界したが、翌1963年、本書で "A Fable"(1954 ☆☆☆★★★)以来二度目のピューリツァー賞受賞。1969年には、"The Reivers" はスティーヴ・マックィーン主演で映画化され…

2021年ピューリツァー賞発表 Lydia Millet の “A Children's Bible”(2)

あああ、先日の国際ブッカー賞につづいて、ピューリツァー賞も予想が外れてしまった。といっても、本気で当てようと思っていたわけではなく、P Prize.com のランキングで上位の作品を4冊読んだだけ。 そのなかで、いちおう "Deacon King" に期待していたの…

James McBride の “Deacon King Kong”(2)と今年のピューリツァー賞予想

去る17日、ぼくと同じように、え?と驚いたひとがいるかもしれない。当日届くはずだった David Diop のペイパーバック版 "At Night All Blood Is Black" が、なぜか1ヵ月先に到着延期との知らせ。あわててキャンセルし、出品しているイギリスの店に発注しな…

Lydia Millet の “A Children's Bible”(1)

Lydia Millet の "A Children's Bible"(2020)を読了。周知のとおり昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙選年間ベスト5小説のひとつでもある。また P Prize. com の予想では、今年のピューリツァー賞「候補作」第3位にランクイン。さ…

Brit Bennet の “The Vanishing Half”(2)

今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the Word"(2020)を読んでいる。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)。スペイン語からの英訳である。なかなか面白い。現地ファンの下馬評では1番人気のようだ。 カバ…

Richard Russo の “Empire Falls”(2)

絶不調というほどではないが相変わらず不調。胃の痛みはまだ少し残っているし、風邪のほうも喉の痛みはなくなったものの、こんどは咳が出るようになった。喘息が再発しなければいいのだけど。 というわけで今週も読書はまったりペース。ご存じ Maggie O'Farr…

Brit Bennet の “The Vanishing Half”(1)

胃のほうは薬のおかげでだいぶ痛みが治まってきたのだけど、こんどはまた風邪をひいてしまい、まるで変声期のようなガラガラ声。微熱の一歩手前のような熱もある。コロナでないことを祈るばかりだ。 ともあれ、上の事情でボチボチ読んでいた Brit Bennet の …

Richard Russo の “Empire Falls”(1)

この二週間ほどずっと胃が痛く、休み休みの読書になってしまった。きょう診察してもらったところ、どうやら逆流性食道炎の再発らしい。薬が効きはじめるまで我慢するしかなさそうだ。なにはともあれ、きのう Richard Russo の "Empire Falls"(2001)をやっ…

Jeffrey Eugenides の “Middlesex”(2)

これも長年の宿題だった。"The Amazing Adventures ...." や "The Corrections" ほどではないにしろやはり大作で、昔のピューリツァー賞受賞作(2003)。ぼくにとっていちばん積ん読になりやすいパターンだ。現代文学の場合、リアルタイムで読まなかった分厚…

Jeffrey Eugenides の “Middlesex”(1)

2003年のピューリツァー賞受賞作、Jeffrey Eugenides の "Middlesex"(2002)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Middlesex: A Novel (English Edition) 作者:Eugenides, Jeffrey 発売日: 2002/09/04 メディア: Kindle版 [☆☆☆★★]「わたしは二度生まれ…

Jonathan Franzen の “The Corrections”(2)

ついに風邪をひいてしまった! たぶんコロナではなく(そう思いたい)、どうも孫からもらったものらしい。孫のほうはもうケロっとしているのだけど、ぼくはまだ頭が痛い。血圧のせいかもしれない。 おかげで、"Middlesex" は足踏み状態。しかも振り返ってみ…

Michael Chabon の “The Amazing Adventures of Kavalier & Clay”(2)

Jeffrey Eugenides の "Middlesex"(2002)をボチボチ読んでいる。ご存じ2003年のピューリツァー賞受賞作だ。孫の世話(けっこう疲れる)その他、なにかと雑用が入り思うように進まないが、なかなか面白い。 同書も2001年に同賞を受賞した表題作(2000)も、…

Jonathan Franzen の “The Corrections”(1)

2001年の全米図書賞受賞作、Jonathan Franzen の "The Corrections" を読了。本書はまた2002年のピューリツァー賞最終候補作でもある。さっそくレビューを書いておこう。 The Corrections (English Edition) 作者:Franzen, Jonathan 発売日: 2010/09/21 メデ…

Michael Chabon の “The Amazing Adventures of Kavalier & Clay”(1)

数日前、Michael Chabon の "The Amazing Adventures of Kavalier & Clay"(2000)を読みおえたのだが、体調その他、諸般の事情でブログを更新する時間がなかなか取れなかった。ご存じ2001年のピューリツァー賞受賞作である。はて、どんなレビューになります…