ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

Beryl Bainbridge の “Master Georgie” (2)と Man Booker Best of Beryl

Beryl Bainbridge はブッカー賞「悲運の女王」だった。同賞のショートリストに史上最多、5回もノミネートされながら、ついに一度も受賞しないまま2010年に物故してしまった。 その栄誉をたたえ、2011年、落選作5冊の中からファン投票でベストワンを選ぶ企…

Beryl Bainbridge の “Master Georgie” (1)

1998年のブッカー賞最終候補作、Beryl Bainbridge の "Master Georgie" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Master Georgie: Shortlisted for the Booker Prize, 1998作者:Bainbridge, BerylAbacusAmazon[☆☆☆★★] ベインブリッジ十八番のブラック・ユー…

Joyce Carol Oates の “A Garden of Earthly Delights” (2)

きょうからブログ名を〈ビンゴー・キッドの日記〉と改め、ついでにデザインも変更しました。春は新しい命が芽生える季節。気分を一新したくなったからです。 さて、この "A Garden of Earthly Delights" は、ぼくの〈旧作探訪シリーズ〉の……第4弾。そろそろ…

Joyce Carol Oates の “A Garden of Earthly Delights” (1)

Joyce Carol Oates の第2作、"A Garden of Earthly Delights" (1967) を読了。1968年の全米図書賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。A Garden of Earthly Delights (The Wonderland Quartet)作者:Oates, Joyce CarolModern LibraryAmazon[…

“A Garden of Earthly Delights” 雑感 (2)

ようやく中盤に差しかかってきた。英語はそうむずかしくない、というか標準的なものだと思うが、なにしろ内容が濃い。「モノがちがう」。 まず感心したのは、ちょっとした日常生活の風景にもピンと張りつめたような空気がただよっている点だ。それぞれの人物…

“A Garden of Earthly Delights” 雑感 (1)

Joyce Carol Oates の "A Garden of Earthly Delights" を読んでいる。恥ずかしながら、ノーベル賞候補と目されることもあるこの巨匠の作品を読むのはこれが初めてだ。 やおら本書に取り組もうと思ったきっかけは、先日紹介した今年の PPrize.Com 発表「ピュ…

Tanis Rideout の “Above All Things” (2)

おとといまでカタツムリ君のペースだったのに、きのうは一気に読み進んだ。「始めは処女の如く後は脱兎の如し」。ここでこの故事成語を引くのは誤用だが、イメージ的にはかなり近い。 ペースが上がったのは、後半、「冒険小説と家庭小説が平行して進み、遭難…

Tanis Rideout の “Above All Things” (1)

昨年のアマゾン・カナダ選ベストテン小説のひとつ、Tanis Rideout の "Above All Things" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Above All Things作者:Rideout, TanisVikingAmazon[☆☆☆★] なにもかも完璧なまでに型どおりの小説だ。愛する妻や子どもたち…

“Above All Things” 雑感 (2)

ようやく中盤に差しかかってきた。英語は簡単なのだが、イマイチ乗れず、カタツムリ君のペースだ。 さほど乗れない理由はいくつかあるが、簡単な英語もそのひとつ。きのう引用した箇所をもういちど読んでみよう。.... over the course of the afternoon and …

“Above All Things” 雑感 (1)

Tanis Rideout の "Above All Things" をボチボチ読んでいる。これはアマゾン・カナダが選んだ昨年のベストテン小説のひとつだ。紹介記事を斜め読みしていたら、the story of George Mallory's legendary attempt to be the first man to conquer Mount Ever…

Ann Patchett の “Bel Canto” (3)

ぼくのように、ほとんどなんの予備知識もなく本書に取りかかると、まず「タイトルから察して……音楽関係の本だとばかり思いこ」み、それが「なんと人質事件の話だった」とわかってビックリ。ついで、たしかにソプラノ歌手は登場するものの、いったいタイトル…

Ann Patchett の “Bel Canto” (2)

雑感にも書いたとおり、これはぼくの〈旧作探訪シリーズ〉第3弾。なにしろ、ミステリ以外の海外文学を本格的に読みはじめたのは今年の夏で13年目。そのうち、最初の6年は古典中心で、現代文学を少しずつリアルタイムで追いかけるようになったのは2006年く…

Ann Patchett の “Bel Canto” (1)

2002年のオレンジ賞受賞作、Ann Patchett の "Bel Canto" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Bel Canto作者:Patchett, AnnHarper PerennialAmazon[☆☆☆★★★] バベルの塔が崩壊したのち人類は共通言語をうしなったが、もしまだそれに近い媒体があるとし…

“Bel Canto” 雑感 (3)

きょうは仕事帰りに〈スタバ〉に寄り、本書の続きを読んだ。あと少しがんばれば読みおえられそうだが、土曜日は晩酌デー。これから一杯やることにしている。 それまでにちょっとだけ、本書を読みながら考えたことを書いておこう。おととい眠い目をこすりつつ…

“Bel Canto” 雑感 (2)

いま英米アマゾンで Ann Patchett の作品リストを検索すると、どちらもトップにあるのは最新作の "State of Wonder" だが、2番目はこの "Bel Canto"。間違いなく彼女の代表作だろう。 冒頭はとてもすばらしい。'When the lights went off the accompanist k…

“Bel Canto” 雑感 (1)

いつだったかも引用したが、2010年8月20日付のガーディアン紙によると、このほど Women's Prize for Fiction と改称された旧オレンジ賞について、A. S. Byatt がこう述べている。"The Orange Prize is a sexist prize. The Orange Prize assumes there is a…

2013年女性小説賞ロングリスト (2013 Women's Prize for Fiction Longlist)

つい最近まで知らなかったのだが、今年からオレンジ賞が Women's Prize for Fiction (女性小説賞)と改称。本日ロングリストが発表された。例によって候補作が多すぎますな。趣旨はさておき、話題作りの商策がミエミエのような気もする。 以下、既読のもの…

Jess Walter の “Beautiful Ruins” (2)

きのう本書を読みおえたのは夜の11時半。もう寝ようかと思ったが、がんばってレビューを書き、風呂に入ってから寝たのが夜中の3時半。2年前の3月11日の深夜はこうだった。「いや怖かった、今日の地震。生きた心地がしなかった。こんな中でもアクセスして…

Jess Walter の “Beautiful Ruins” (1)

パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ昨年の最優秀作品のひとつ、Jess Walter の "Beautiful Ruins" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Beautiful Ruins: A Novel (P.S.)作者:Walter, JessHarper PerennialAmazon[☆☆☆☆] 断崖絶壁にかこまれたイタ…

“Beautiful Ruins” 雑感 (2)

きょうは、ある方面では毎年、日本でいちばん長い日である。と書いただけで、ぼくの本業がわかる人もいるだろう。 で、結果は、数としては過去最高ではなかったが、〈ライバル社〉に大差をつけて勝ったという意味では新記録達成! 思えば去年の〈仕込み時期…

“Beautiful Ruins” 雑感 (1)

Jess Walter の "Beautiful Ruins" をボチボチ読んでいる。パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ昨年のベスト作品のひとつで、例によって紹介記事も読まず、ジャケ買いしたものだ。 きょうは出勤日で、かつ晩酌デーでもあったので、まだろくに進んでいな…

Adriana Trigiani の “Home to Big Stone Gap” (2)

きのうのレビューに載せたカバー写真を見ればおわかりのとおり、これは見た目にとても魅力的。というわけで数年前にジャケ買いしたのだが、長らく積ん読のままだった。 この、ぼく流にいえば「見てくれ買い」、いままでわりとヒット率が高いのだけれど、今回…

Adriana Trigiani の “Home to Big Stone Gap” (1)

アメリカのベストセラー作家 Adriana Trigiani の旧作、"Home to Big Stone Gap" (2006) を読了。さっそくレビューを書いておこう。Home to Big Stone Gap: A Novel作者:Trigiani, AdrianaBallantine BooksAmazon[☆☆☆] ヴァージニアの山中にある小さな町 Big…

“Home to Big Stone Gap” 雑感

"The Shoemaker's Wife" の続報だが、いま検索すると、米アマゾンの Literature & Fiction 部門で、4ヵ月以上連続してベストセラー Top 100 入りを果たしているようだ。そのうち邦訳が出るかもしれない。それとも、もう出ているのかな。 さて、今週は同書よ…

Adriana Trigiani の “The Shoemaker's Wife” (2)

まずテキストから補足すると、ぼくが読んだのはイギリスの Simon & Shuster 社版。米アマゾンのブッククラブに載っているのは、もちろんアメリカ版のほうだ。どちらにしても500ページ近くあり、もし書店で手にしたら買うのをためらうかもしれない。 同クラブ…

Adriana Trigiani の “The Shoemaker's Wife” (1)

アメリカのベストセラー作家 Adriana Trigiani の最新作、"The Shoemaker's Wife"(2012)を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Shoemaker's Wife: A Novel作者:Trigiani, AdrianaHarper PaperbacksAmazonThe Shoemaker's Wife作者:Trigiani, Adrian…

“The Shoemaker's Wife” 雑感

Adriana Trigiani の "The Shoemaker's Wife" を読んでいる。これは去年の暮れ、英米の各メディアが選んだ年間ベスト作品を調べていたとき、米アマゾンの Book Clubs の Literary Fiction コーナーで見つけたものだ。 同クラブを利用するのは、去年の7月に…

Colm Toibin の “The Blackwater Lightship” (2)

これはぼくの〈旧作探訪シリーズ〉第1弾。最近、珍しくがんばって去年の話題作に取り組んできたが、昔からずっと書棚の飾りになっている本はそのままだ。積ん読の山を少しずつ切り崩そう、というのが今年の目標のひとつである。 ぼくは今でこそ現代文学のオ…

2012年全米批評家協会賞発表 (2012 National Book Critics Circle Awards)

ニューヨーク時間で2月28日、全米批評家協会賞が発表され、フィクション部門では、Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" が栄冠に輝いた。ぼく自身は Adam Johnson の "The Orphan Master's Son" [☆☆☆☆] が本命と思っていたが、"Billly Lynn'…