ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

William Trevor の "Love and Summer"(2)

本書の感想を簡単に言えば、ウィリアム・トレヴァーってやっぱりうまい作家だなあ。これ、ブッカー賞の選考委員もまっ先に感じたことではないだろうか。おとといの雑感に、結末がどうなるか、ぼくの「予想は当たるでしょうか」と書いたが、読みおわってみる…

William Trevor の "Love and Summer"(1)

今年のブッカー賞候補作の一つ、William Trevor の "Love and Summer" を読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。Love and Summer作者: William Trevor出版社/メーカー: Viking発売日: 2009/08/17メディア: ペーパーバック購入: 1人 …

"Love and Summer" 雑感

今日は Joshua Ferris の "Then We Came to the End" についてもっと書くはずだったが、昨日のレビューを読みかえすと、「おかしくて、やがて哀しきサラリーマン人生かな」という下手くそな俳句(?)でぼくの感想は尽きている。そこで、昼過ぎから読みはじ…

Joshua Ferris の "Then We Came to the End"

07年の全米図書賞候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙の年間ベスト作品にも選ばれた Joshua Ferris の "Then We Came to the End" をやっと読みおえた。今までの雑感のまとめに過ぎないが、さっそくレビューを書いておこう。Then We Came to the End作者: Jo…

"Then We Came to the End" 雑感(3)

今日も仕事に追われたが、何とか雑感の続きを書けそうなところまで読み進んだ。で、遅まきながら気がついたのだが、本書は3部構成。第1部と第3部では平社員の目を通して広告代理店の社内風景が描かれている。それが本書の大半を占め、第2部は40ページ足…

Elizabeth Inness-Brown の "Burning Marguerite"

帰省休み明けの今日は仕事に追われ、ほとんど本が読めなかった。そこで昔のレビューでお茶を濁しておこう。3年前、「雪と炎のシャーベット」と題してアマゾンに投稿、その後削除したものだ。Burning Marguerite作者: Elizabeth Inness-Brown出版社/メーカー…

"Then We Came to the End" 雑感(2)

やっと田舎から帰ってきた。バスと飛行機の中で本書の続きをずっと読んでいたが、相変わらずとても快調。今のところ、ひとことで言えばサラリーマン小説か。サラリーマンの毎日なんて文学とはおよそ無縁のものと思っていたけれど、それが書きようによってこ…

"Then We Came to the End" 雑感(1)

Joshua Ferris の "Then We Came to the End" に取りかかった。一昨年の全米図書賞候補作で、同年のニューヨーク・タイムズ紙選定最優秀作品の一つでもある。もっか帰省中で、お墓掃除やら何やらで意外に忙しく、まだ少ししか読んでいないが、なかなか面白い…

Mark Slouka の "The Visible World"(2)

おとといの雑感にも書いたが、これは最初、「ちょっとモタモタした感じ」がして今ひとつ乗れなかった。あとで起こる事件の伏線が張られていることは分かるのだが、いささか話が飛びすぎているのではないか。これと同じような展開で、もっとうまい小説を読ん…

Mark Slouka の "The Visible World"(1)

Mark Slouka の "The Visible World" をやっと読みおえた。いつものようにレビューを書くまわりだが、もっか帰省中なので、昨日と同じくケータイからこれを打ちこんでいる。いやはや、面倒くさいことこの上ない。The Visible World: A Novel作者:Slouka, Mar…

"The Visible World" 雑感

久しぶりに帰省。どうもノリが悪くて中断していた Mark Slouka の "The Visible World" を飛行機の中で改めて読みはじめたら、だんだん面白くなってきた。去年の Richard & Judy's Book Club 推薦図書の一つである。積ん読の山を少しでも切り崩そうと手に取…

Jeanette Winterson の "Lighthousekeeping"

読みだした本はあるのだが、夏バテのせいか今ひとつノリが悪い。そこで今日は、久しぶりに昔のレビューでお茶を濁しておこう。たしか3年前、「愛は灯台の灯のごとく」と題してアマゾンに投稿、その後削除したものだ。Lighthousekeeping作者: Jeanette Winte…

Sadie Jones の "The Outcast"(2)

これは勘の鈍いぼくでも、かなり早い段階でその後の展開と結末がほぼ分かった。読んでいる最中は、親に理解されない少年が主人公ということで『エデンの東』を連想したのだが、今思うと人物関係は立原正秋の『冬の旅』のほうが近い。映画なら、少年院つなが…

Sadie Jones の "The Outcast"(1)

今年のコスタ賞最優秀新人賞作品、Sadie Jones の "The Outcast" を読了。ずっと以前から気になっていた本だが、もっと早く読むべきだった。さっそくレビューを書いておこう。The Outcast作者: Sadie Jones出版社/メーカー: Vintage発売日: 2008/06/16メディ…

Colm Toibin の "The Master"(2)

本書の感想は昨日のレビューに書いたとおりだが、その前の雑感でふれた疑問点について今日は考えてみたい。ぼくはこれを読みながら、主人公が大作家というだけあって、さすがに人間観察は鋭いし、内面描写もえらく細かいなあと感心していたのだが、そのうち…

Colm Tóibín の "The Master"(1)

Colm Tóibín の "The Master" を読みおえた。周知のとおり、04年のブッカー賞最終候補作のひとつだが、文学ミーハーのぼくでもストーリーを追うだけでなく、じっくり考えさせられることが多かった。一昨日の雑感の続きになりそうだが、さっそくレビューを書…

"The Master" 雑感

恥ずかしながら本書は未読だったが、Colm Tóibín の最新作 "Brooklyn" が今年のブッカー賞のロングリストに選ばれたのを機に取りかかった。第2章に入り、主人公がヘンリー・ジェイムズであることが判明。そこでやっと、今まで本書を敬遠していた理由を思い…

David Ebershoff の "The 19th Wife"

600ページの大作だったが、何とか読みおえた。読みだしたときはアマゾンUKのフィクション部門ベストセラー70位だったのに、今検索すると100位圏外。星もひところの4つから3つ半。ぼくの評価も3つ半だ。ともあれ、例によって雑感のまとめに過ぎないがレビ…

"The 19th Wife" 雑感(2)

ミステリ篇のほうは昨日と同様、まずまず面白い。重婚を是とするモルモン教の一派から破門された青年が、夫殺しの疑いをかけられた母親の無実を証明しようと真相解明に乗り出すわけだが、立場上、間接的な聞きこみしかできない。それゆえ調査はゆっくり進む…

"The 19th Wife" 雑感(1)

積ん読の山を少しでも切り崩そうと、David Ebershoff の "The 19th Wife" に取りかかった。もっか、アマゾンUKのフィクション部門ベストセラー第70位。かなり前から同リストの常連だが、評価はひところの星4つから3つ半に下がっている。 Richard & Judy Bo…

Joseph Boyden の "Through Black Spruce"(2)

一夜明けて本書をふりかえると、これは一種のミステリにふくめてもいいかな、という気がする。昏睡状態のウィルに何が起こったのか、妹を捜しに行ったはずのアニーが今はなぜウィルの看病をしているのか、妹の身に何があったのか…といった謎が次第に解き明か…

Joseph Boyden の "Through Black Spruce"(1)

ああ面白かった! これはギラー賞の昨年の受賞作だが、本書の前に読んだ Elizabeth Hay の "Late Nights on Air" と同様、カナダで最も権威のある文学賞という評判に恥じない会心の出来。昨日の雑感で試みたへたくそな要約を踏まえて、さっそくレビューを書…

"Through Black Spruce" 雑感

Elizabeth Hay の "Late Nights on Air" がとてもよかったので、続いてギラー賞の昨年の受賞作、Joseph Boyden の "Through Black Spruce" に取りかかった。これも今のところ、とても面白い。といっても、"Late Nights on Air" とは対照的に、アクションまた…

Elizabeth Hay の "Late Nights on Air"(2)

本書がカナダで最も権威のある文学賞、ギラー賞(The Scotiabank Giller Prize)の07年度受賞作であることは前から知っていたが、ときどき検索してもハードカバーしか出ていないようなので注文を見合わせていた。それがたまたま、この春ペイパーバック化され…

Elizabeth Hay の "Late Nights on Air"(1)

ギラー賞(The Scotiabank Giller Prize)2007年度受賞作、Elizabeth Hay の "Late Nights on Air" を読みおえた。これは見事な秀作だ! 年末に選ぶ予定の、今年の下半期ベスト3に間違いなく入ると思う。昨日の雑感と重なる部分も多いが、興奮のさめやらぬ…

"Late Nights on Air" 雑感

同じ不倫を描いても大衆小説と文学史に残るような名作の違いはどこにあるのだろう、という興味から何十年ぶりかで『ボヴァリー夫人』を読んでみたが、その名作たるゆえんは、精緻をきわめた性格や心理の描写と、人間が持って生まれた欠点のせいで必然的に破…

Flaubert の "Madame Bovary"

フローベールの名作『ボヴァリー夫人』を Oxford World's Classics 版で読みおえた。今までの雑感とたいして変わらないが、さっそくレビューを書いておこう。 本書は1933年にジャン・ルノワール監督作品として初めて映画化され、その後も何度か映画化されて…

"Madame Bovary" 雑感(3)

昨晩、出張先から帰ってきたが、疲れていたので日記を書く気にはなれず、おとといケータイで送信したぶんの字句を訂正しただけで寝てしまった。 順調に行けば本書は今日中に読みおわると思うが、相変わらず、あ、ここはたしか読んだ憶えが…という箇所がひと…

"Madame Bovary" 雑感(2)

久しぶりに出張。ケータイでこれを書いているが、ここまで打ちこんでもうイヤになった。 マセガキだった中学生のとき以来、何十年ぶりかで接した本書だが、いくら読んでも昔の記憶がよみがえってこない。おかげで新鮮な「発見」がいくつかある。 まず、ボヴ…