ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

国際ブッカー賞

Benjamín Labatut の “When We Cease to Understand the World”(2)

今年もこの季節、イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞のロングリストに入選しそうな作品の予想で大いに盛り上がっている。世界のどの文学賞でも、本選はおろか、予選の前からこれほど下馬評の飛びかう賞はほかに例がないのではないか。 ぼくも久し…

2021年国際ブッカー賞発表 David Diop の “At Night All Blood Is Black”(2)

ちょっと驚いた。「竜頭蛇尾のアレゴリー小説」とぼくがケチをつけた "At Night All Blood Is Black" (☆☆☆★)が、大方の予想に反して国際ブッカー賞を受賞するとは! もっとも、本書は2番人気だったので、なかには予想が的中した現地ファンもいる。ぼくは…

David Diop の “At Night All Blood Is Black”(1)

David Diop の "At Night All Blood Is Black" を読了。周知のとおり今年の国際ブッカー賞最終候補作で、仏語の原作 "Frère d'âme"(2018)は刊行年に Prix Goncourt des Lycéens(高校生のゴンクール賞)を受賞。英訳版(2020)も先日、ロサンゼルス・タイ…

Benjamín Labatut の “When We Cease to Understand the World”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the World"(2020)を読了。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)で、スペイン語からの英訳である。さっそくレビューを書いておこう。 When We Cease to Underst…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(2)

このところ家の掃除で大忙し。かなり疲れるが、それでもあちこち動きまわれるのは、たぶんコロナにかかっていない証しだろうと思うとひと安心。2番目の孫ユマちゃんの初宮参りで鶴岡八幡宮に出かけたのが、ちょうど2週間前だからだ。 掃除がひと区切りつい…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(1)

今年の国際ブッカー賞受賞作、Marieke Lucas Rijneveld の "The Discomfort of Evening"(2018)を読了。Rijneveld はオランダの若手女流作家で、原語はオランダ語。さっそくレビューを書いておこう。 The Discomfort of Evening: WINNER OF THE BOOKER INTE…

Orhan Pamuk の “A Strangeness in My Mind”(2)

師走が近づいてきて、テンプのぼくもそれなりに忙しくなってきた。おかげで、というか毎度のことだけど、いま読んでいる本もなかなか進まない。Don Delillo のご存じ超大作 "Underworld"(1997)である。 え、あんたまだ読んでなかったの、と嗤われそうだが…

Orhan Pamuk の “A Strangeness in My Mind”(1)

トルコのノーベル賞作家、Orhan Pamuk の "A Strangeness in My Mind"(原作2014、英訳2015)を読了。2016年のブッカー国際賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 後記:この記事を書いたときは、本書が彼の最新作と勘違いしていた。正しく…

Jokha Alharthi の “Celestial Bodies”(2)と、最近の海外文学の低調

前々回、こんどのフランス旅行で今年のハイライトはおしまい、と書いた。帰国して平凡な日々が再開してみると、いまは実際、「days after」という感が強い。去年の春のハワイ旅行では、そういうこともなかったのに。 ハイライトといえば、やむを得ぬ事情で復…

Jokha Alharthi の “Celestial Bodies”(1)

楽あれば苦あり。フランス旅行が一睡の夢のように終わったあと、帰国した翌日からボチボチ仕事を始め、今週はけっこう忙しい。といっても、自分で課したノルマをこなすだけなので、実際には、少し苦あり。 旅行中、バッグの底に忍ばせていた Jokha Alharthi …

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(2)

超繁忙期は終わったものの、相変わらず〈自宅残業〉の毎日だ。テンプなので勤務時間が過ぎるとすぐに退勤できるのはいいのだけど、勤務時間内に片づけられなかった仕事を家に持ち帰る破目になる。因果な商売だ。 おかげで読書量も激減。いま読んでいる Ali S…

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(1)

今年のブッカー国際賞最終候補作、Alia Trabucco Zerán(チリ)の "The Remainder"(原作2014、英訳2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Remainder (English Edition) 作者: Alia Trabucco Zerán 出版社/メーカー: And Other Stories 発売日…

文学と政治:Juan Gabriel Vásquez の “The Shape of the Ruins”(2)

今週というか先週というか、とにかくこの一週間は超繁忙期につき、毎日〈自宅残業〉。きょうも日曜日なのに出勤して仕事の遅れを取り戻し、帰りにジムに寄って、なまった身体を鍛え直してきたところだ。 そんなわけで読書は小休止。その代わりストレスの発散…

2019年ブッカー国際賞発表

日本時間5月22日13時。7時間前、今年のブッカー国際賞の受賞作が発表され、オマーンの女流作家、Jokha Alharthi の "Celestial Bodies"(未読)が栄冠に輝いたとのこと。オマーンの作家はもちろん、アラビア語で書かれた作品が受賞したのも史上初めてらし…

Juan Gabriel Vásquez の “The Shape of the Ruins”(1)

このところ、四月から一年契約で復帰した元の職場が繁忙期。家に帰るとぐったりで、おまけに風邪もひいてしまい、本を読むスピードがめっきり落ちてしまった。そんなこんなで、ゆうべ、やっと読みおえたのが Juan Gabriel Vásquez の "The Shape of the Ruin…

文学と政治:Annie Ernaux の “The Years”(2)

前回のあとも、Juan Gabriel Vásquez の "The Shape of the Ruins" をボチボチ読んでいる。仕事がなければクイクイ行けそうなほど面白い。 Vásquez の作品を読むのは二年ぶり二作目。2013年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、"The Sound of Things Falling"…

Annie Ernaux の “The Years”(1)

ゆうべ、横浜のさるホテルで催された某氏の米寿を祝う会に出席。ここで名前を書くと、え、とみなさんが驚くような有名人も祝辞を述べた。そのあと会場のあちこちで昔話に花が咲き、ぼくも来し方をしばし振り返った。その歳月を文字で表現するなら、どういう…

"The Years" 雑感(3)

きょうは朝、ユンケルを飲んでから出勤。午前中で仕事が終わったあと、ジムでひとっ走り。長い長い一週間がやっと終わった。 電車の中で読んでいる本は相変わらず、今年のブッカー国際賞最終候補作、Annie Ernaux の "The Years" だが、相変わらず、つまらな…

"The Years" 雑感(2)

一年ぶりに職場へ復帰し、通勤ラッシュの人波にもまれる生活が再開。おかげで読書のスピードもカタツムリくん。「ブログはヒマな人がやるもの」という昔聞いた同僚の言葉を実感している。(お仕事が多忙なブロガーのみなさんを中傷する意ではありません。あ…

今年のブッカー国際賞ショートリスト予想

そろそろ Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence" の落ち穂拾いをしなければ、と思いつつ〈自宅残業〉に追われている。その合間にボチボチ読んでいるのが Annie Ernaux(フランス) の "The Years"(原作2008、英訳2017)。ご存じのとおり、今年のブッカ…

Olga Tokarczuk の “Flights”(4)

本書の目玉のひとつは解剖学にかんする断章だろう。人体や内臓の標本を展示した博物館、17世紀の死体解剖の話など、いわば怖い物見たさも手伝ってかなり面白い。奇書と言ってもいいほどだ。が、それとタイトル "Flights" との関係はどうなのか。 そう疑問に…

Olga Tokarczuk の “Flights”(3)

論より証拠、と俗に言うが、この出典が〈江戸いろはかるた〉だとは先ほど調べるまで知らなかった。調べようと思ったのは、どこかの国の政界やマスコミのあいだで空理空論の思い込みが蔓延しているような気がしたからではない。この "Flights" で示されている…

Olga Tokarczuk の “Flights”(2)

最終的な評価は☆☆☆★★にしたけれど、途中はこれ、かなり退屈な本だった。ソファに寝転がって読んでいると、ついウトウト。目が覚めると、聴きはじめたはずのブルックナーがもう終わり、ということがよくあった。ブルックナーがいけなかったのかな。 もちろん…

Olga Tokarczuk の “Flights”(1)

ゆうべ、今年のブッカー国際賞受賞作、Olga Tokarczuk の "Flights"(2007)を読了。原語はポーランド語。さっそくレビューを書いておこう。Flights作者: Olga Tokarczuk,Jennifer Croft出版社/メーカー: Riverhead Books発売日: 2018/08/14メディア: ハード…

Han Kang の “The White Book”(2)

いくつか落ち穂拾いをしたい作品があるが、きょうは順番を変えて "The White Book"。ご存じ今年のブッカー国際賞最終候補作である。現地ファンのあいだでは1番人気のようだ。 ちなみに、2番・3番人気は Olga Tokarczuk(Jennifer Croft 訳) の "Flights"…

Han Kang の “The White Book”(1)

今年のブッカー国際賞最終候補作、Han Kang の "The White Book" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The White Book作者: Han Kang,Deborah Smith出版社/メーカー: Portobello Books Ltd発売日: 2018/04/05メディア: ペーパーバックこの商品を含むブ…

Ahmed Saadawi の “Frankenstein in Baghdad”(2)

妙な言い方かもしれないが、老後の生活もやっと軌道に乗ってきた。ハローワークで失業保険の手続きを済ませ、フィットネスクラブに通って運動を開始。もっか、バタ足の練習をしているところ。 何よりほぼ一日一本、映画を見られるようになったのが大きい。ぼ…

Ahmed Saadawi の “Frankenstein in Baghdad”(1)

今年のブッカー国際賞最終候補作、Ahmed Saadwi の "Frankenstein in Baghdad" を読了。アラビア語の原書は2013年刊、英訳版は2018年刊である。さっそくレビューを書いておこう。FRANKENSTEIN IN BAGHDAD作者: Ahmed Saadawi出版社/メーカー: Penguin Books…

David Grossman の “A Horse Walks Into a Bar”(2)

やっと2回目にこぎ着けた。既報のとおり、ブッカー国際賞 (The Man Booker International Prize)の今年の受賞作である。昨年から同賞の対象は作家ではなく作品に変更され、その意味で本書は第2回受賞作。 去年の Han Kang の "The Vegetarian"(☆☆☆★★★)…

2017年ブッカー国際賞受賞作・David Grossman の “A Horse Walks Into a Bar”(1)

順番から言うと、きょうは Elizabeth Strout の "Anything Is Possible" の話を続ける日だが、その前に、ゆうべ読みおえた David Grossman の "A Horse Walks Into a Bar"(2016)のレビューを書いておかないといけない。 Grossman はイスラエルの作家で、本…