ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

国際ブッカー賞

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Banu Mushutaq の “Heart Lamp”(2)

今年もこの季節、例によってブッカー賞の動向をチェックしている。いまはレース前につき、各馬ともパドックを周回中だが、ほんとの競馬とちがって出走馬はまだ決まっていない。 ぼくの推計だと、これまで50人くらいの現地ファンが予想リストを公表。東洋の某…

Banu Mushutaq の “Heart Lamp”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞受賞作、Banu Mushutaq の "Heart Lamp"(2025)を読了。Banu Mushutaq(1948 - )は南インド四州の一つ、カルナータカ州出身の作家で、活動家、弁護士でもある。本書は全12話の短編集で、原語はカルナータカ州の公用語カンナダ…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(4)

外出時、バスの友をどうしようか迷っていたら、新刊ペイパーバックが二冊届いた。今年の国際ブッカー賞受賞作 "Heart Lamp"(2025)と、同じく今年の女性小説賞最終候補作 "Tell Me Everything"(2024)である。 後者はご存じ Elizabeth Strout の作品で、現…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(3)

ちょうど一週間前、ある現地ファンのこんなコメントを見かけた。Not really a prediction but a discussion starter to mark 1st June and the official opening of Longlist speculation season. 彼が公開したリストはこうだ。 “We Pretty Pieces of Flesh”…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(2)

先日、小用で外出。何日かぶりに "Mrs Palfrey at the Claremont"(1971)をバスのなかで読むことができた。相変わらず面白い。 Mrs Palfrey は老婦人で、夫はとうに他界。スコットランドに住む娘の Elizabeth と別れ、ロンドンの二流ホテル the Clarement …

Vincent Delecroix の “Small Boat”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞最終候補作、Vincent Delecroix の "Small Boat"(2023, 英訳2024)を読了。Vincent Delecroix(1969 - )はフランスの哲学者、作家で、"Small Boat"(原題 "Naufrage")は2023年のゴンクール賞一次候補作でもあった。さっそく…

Jenny Erpenbeck の “Kairos”(4)

真綿色したシクラメンほど 清しいものはない 出逢いの時の君のようです♪ ぼくの学生時代は四畳半フォークの全盛期だった。ぼくもよく友人たちと東京杉並の善福寺公園に出かけては、その一角でギターをかき鳴らしたものだけど、広い公園と四畳半はいかにもア…

Jenny Erpenbeck の “Kairos”(3)

本書の「融合話法」、レアではあるけれど、ラテアメ文学などに前例がないわけではない。が、あちらはどんなにヘンテコな世界でもおおむね物語性があり、ワケがわからなくてもおもしろい。わかったときは、なおさらおもしろい。 一方、表題作はもちろんマジッ…

Jenny Erpenbeck の “Kairos”(2)

下の写真を撮ったあと、気になる箇所を修復していたら、またしても艦尾の旗竿を折ってしまった。 とにかく艦船模型はむずかしい。ほんとうは空中線を張ると、さらにホンモノらしくなりそうなのだけど、作業中に旗竿のほか艦橋やマストなどもぶっ壊しそう。こ…

Jenny Erpenbeck の “Kairos”(1)

先日、昨年の国際ブッカー賞受賞作 Jenny Erpenbeck の "Kairos"(2021, 英訳2023)を読了。Erpenbeck(1967 - )はドイツの著名な作家で、本書は彼女の長編第四作。 これ以前にも、第一作 "Visitation"(2008, 英訳2010 未読)が2019年にガーディアン紙の t…

Georgi Gospodinov の “Time Shelter”(2)

今年のブッカー賞最終候補作は、前回紹介した現地の人気ランキングをもとに、上位四作を注文した。デカ本らしい "The Bee Sting" と人気薄の "Western Lane" はパス。 四冊とも手元に届くのは来月になりそうなので、それまでのツナギに Michel Houellebecq …

Georgi Gospodinov の “Time Shelter”(1)

数日前、今年の国際ブッカー賞受賞作、Georgi Gospodinov の "Time Shelter"(2020, 英訳2022)を読みおえたのだけど、例によって散漫な読みかたが災いし、きょうまでなかなか感想をまとめる気にならなかった。Gospodinov はブルガリアの作家で、本書は彼の…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(4)

腰痛がかなり治まってきた。たぶん、常時着用している医療用サポーターと、最近使いはじめた椅子用腰クッションのおかげだろう。クッションのほうは即効性こそなかったものの、日がたつにつれ効果を感じるようになった。人間工学というのはスゴイですな。 と…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(3)

今年のピューリツァー賞はご存じのように二冊受賞。チェック洩れかもしれないけど、これはどうも史上初のようだ。 ぼくはすでに二冊とも落手したが(最近、米アマゾンのサービスはとても迅速)、届いた Barbara Kingsolver の "Demon Copperhead"(2022)を…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(2)

先日届いた椅子用腰クッションの効果はまずまず。楽は楽だが、これで一気に腰痛が解消というほどではない。もっとも、そんなスグレモノなんてあるわけないんだけど。 長時間すわっていられないので、もともと少ない読書量がさらに減。日英どちらの本も休憩し…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(1)

2022年の国際ブッカー賞受賞作、Geetanjali Shree(1957 - )の "Tomb of Sand"(2018, 英訳2021)を読了。Shree はインドの作家で、いままで五作の長編小説といくつかの短編集を上梓。本書は、ヒンディー語から英訳され国際ブッカー賞を獲得した史上初の作…

Benjamín Labatut の “When We Cease to Understand the World”(2)

今年もこの季節、イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞のロングリストに入選しそうな作品の予想で大いに盛り上がっている。世界のどの文学賞でも、本選はおろか、予選の前からこれほど下馬評の飛びかう賞はほかに例がないのではないか。 ぼくも久し…

2021年国際ブッカー賞発表 David Diop の “At Night All Blood Is Black”(2)

ちょっと驚いた。「竜頭蛇尾のアレゴリー小説」とぼくがケチをつけた "At Night All Blood Is Black" (☆☆☆★)が、大方の予想に反して国際ブッカー賞を受賞するとは! もっとも、本書は2番人気だったので、なかには予想が的中した現地ファンもいる。ぼくは…

David Diop の “At Night All Blood Is Black”(1)

David Diop の "At Night All Blood Is Black" を読了。周知のとおり今年の国際ブッカー賞最終候補作で、仏語の原作 "Frère d'âme"(2018)は刊行年に Prix Goncourt des Lycéens(高校生のゴンクール賞)を受賞。英訳版(2020)も先日、ロサンゼルス・タイ…

Benjamín Labatut の “When We Cease to Understand the World”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the World"(2020)を読了。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)で、スペイン語からの英訳である。さっそくレビューを書いておこう。 When We Cease to Underst…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(2)

このところ家の掃除で大忙し。かなり疲れるが、それでもあちこち動きまわれるのは、たぶんコロナにかかっていない証しだろうと思うとひと安心。2番目の孫ユマちゃんの初宮参りで鶴岡八幡宮に出かけたのが、ちょうど2週間前だからだ。 掃除がひと区切りつい…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(1)

今年の国際ブッカー賞受賞作、Marieke Lucas Rijneveld の "The Discomfort of Evening"(2018)を読了。Rijneveld はオランダの若手女流作家で、原語はオランダ語。さっそくレビューを書いておこう。 The Discomfort of Evening: WINNER OF THE BOOKER INTE…

Orhan Pamuk の “A Strangeness in My Mind”(2)

師走が近づいてきて、テンプのぼくもそれなりに忙しくなってきた。おかげで、というか毎度のことだけど、いま読んでいる本もなかなか進まない。Don Delillo のご存じ超大作 "Underworld"(1997)である。 え、あんたまだ読んでなかったの、と嗤われそうだが…

Orhan Pamuk の “A Strangeness in My Mind”(1)

トルコのノーベル賞作家、Orhan Pamuk の "A Strangeness in My Mind"(原作2014、英訳2015)を読了。2016年のブッカー国際賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 A Strangeness in my Mind: A novel (Vintage International) (English Edit…

Jokha Alharthi の “Celestial Bodies”(2)と、最近の海外文学の低調

前々回、こんどのフランス旅行で今年のハイライトはおしまい、と書いた。帰国して平凡な日々が再開してみると、いまは実際、「days after」という感が強い。去年の春のハワイ旅行では、そういうこともなかったのに。 ハイライトといえば、やむを得ぬ事情で復…

Jokha Alharthi の “Celestial Bodies”(1)

楽あれば苦あり。フランス旅行が一睡の夢のように終わったあと、帰国した翌日からボチボチ仕事を始め、今週はけっこう忙しい。といっても、自分で課したノルマをこなすだけなので、実際には、少し苦あり。 旅行中、バッグの底に忍ばせていた Jokha Alharthi …

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(2)

超繁忙期は終わったものの、相変わらず〈自宅残業〉の毎日だ。テンプなので勤務時間が過ぎるとすぐに退勤できるのはいいのだけど、勤務時間内に片づけられなかった仕事を家に持ち帰る破目になる。因果な商売だ。 おかげで読書量も激減。いま読んでいる Ali S…

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(1)

今年のブッカー国際賞最終候補作、Alia Trabucco Zerán(チリ)の "The Remainder"(原作2014、英訳2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Remainder (English Edition) 作者: Alia Trabucco Zerán 出版社/メーカー: And Other Stories 発売日…

文学と政治:Juan Gabriel Vásquez の “The Shape of the Ruins”(2)

今週というか先週というか、とにかくこの一週間は超繁忙期につき、毎日〈自宅残業〉。きょうも日曜日なのに出勤して仕事の遅れを取り戻し、帰りにジムに寄って、なまった身体を鍛え直してきたところだ。 そんなわけで読書は小休止。その代わりストレスの発散…

2019年ブッカー国際賞発表

日本時間5月22日13時。7時間前、今年のブッカー国際賞の受賞作が発表され、オマーンの女流作家、Jokha Alharthi の "Celestial Bodies"(未読)が栄冠に輝いたとのこと。オマーンの作家はもちろん、アラビア語で書かれた作品が受賞したのも史上初めてらし…