ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

20世紀および現代イギリス文学

原則的にブッカー賞の設立(1969年)以前の作品、およびブッカー賞選外の作品を扱っています

Elizabeth Taylor の “Angel”(2)

J.G. Farrell(1935 - 1979)の "Troubles"(1970)を読みはじめた。じつはこれ、今年こそ片づけようと年始に決めていた本の一冊。ご存じ Lost Man Booker Prize の受賞作である。 Booker Prize が創設されたのは1969年で、翌70年まで対象は前年刊行の作品だ…

Elizabeth Taylor の “Angel”(1)

ゆうべ、Elizabeth Taylor(1912 - 1975)の "Angel"(1957)を読了。この Elizabeth Taylor は同名の女優とは別人物。本書は2007年、フランソワ・オゾン監督により映画化され、同年日本でも公開されている。邦題は『エンジェル』。さっそくレビューを書いて…

ぼくの  “Homage to Ukraine”

いま、なにをなすべきなのか。 この質問を前回自分に投げかけてから、無い知恵を必死に絞ってみた。たまたま1年近く前、"Homage to Catalonia"(1938 ☆☆☆☆★★)を英語版で読みかえしたことを思い出し、もし George Orwell が現存の作家だったらどうするか考…

Virginia Woolf の “Mrs Dalloway”(3)

相変わらず絶不調。微熱がひかず、活字を目で追いかけるのがしんどい。予定ではとうに読みおえているはずの "Snow" もやっと半分まで進んだところ。 その中盤前から主人公のトルコの詩人 Ka は、訪れた地方都市 Kars で限定的に発生した軍事クーデターに巻き…

Virginia Woolf の “Mrs Dalloway”(2)

コロナかふつうの風邪か、どちらにしても発症8日目。だいぶ回復してきたが、まだ微熱が残っている。ぼくは平熱が低いので、すこしでも熱があると頭がぼんやりする。この状態が長引くのが風邪をひいたときの通例で、してみると、やっぱりふつうの風邪だった…

Virginia Woolf の  “Mrs Dalloway”(1)

きのう、やっと Vriginia Woolf の "Mrs Dalloway"(1925)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Mrs Dalloway 作者:Woolf, Virginia Penguin Classics Amazon [☆☆☆☆★] ヴァージニア・ウルフ版『戦争と平和』といえるかもしれない。一方に、第一次大戦…

Sarah Waters の “Affinity”(1)

きのう、Sarah Waters の "Affinity"(1999)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Affinity (Virago V) 作者:Waters, Sarah Virago Press (UK) Amazon [☆☆☆★★] タイトルはいわゆるソウルメイトの意。書中でそう説明されたとき、はたして心の友は存在し…

Leone Ross の “Popisho”(2)

これは先月、今年のブッカー賞ロングリストの発表直前に読みおえた。現地ファンの入選予想ランキング第8位ということで、なんとか滑りこみセーフを期待したのだが、当てはずれ。本書はあえなく選外となってしまった。 ただし、読みはじめたときからイヤな予…

Natasha Brown の “Assembly”(2)

今年の1月、"Introducing our 10 best debut novelists of 2021" と題されたガーディアン紙の記事を目にした海外文学ファンも多いことだろう。(https://www.theguardian.com/books/2021/jan/31/introducing-our-10-best-debut-novelists-of-2021)が、ぼく…

Ivy Compton-Burnet の “Manservant and Maidservant”(2)と、英米小説ベスト13

Ivy Compton-Burnet(1892–1969)というイギリスの女流作家がいることを知ったのは、たぶん学生時代ではないか。必要があって英文学史の本を読んでいるとき、こんな作家もいる、くらいの扱いで名前を目にしたような気がする。 その後、小林信彦氏の『小説世…

Leone Ross の “Popisho”(1)

今年のブッカー賞ロングリスト発表が迫ってきた(ロンドン時間7月27日)。ぼくは体調その他、諸般の事情でしばらく読書そのものからほとんど遠ざかっていたので、いま久しぶりに現地ファンの入選作予想をチェックしたところ、きのう読了した Leone Ross の …

Natasha Brown の “Assembly”(1)

きのう、Natasha Brown の "Assembly"(2021)を読了。Natasha Brown は既報のとおり、ガーディアン紙で紹介された今年の有望新人作家のひとりで、本書は彼女の処女作。イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞ロングリストに入選しそうな作品として評…

Ivy Compton-Burnet の “Manservant and Maidservant”(1)

イギリスの女流作家 Ivy Compton-Burnet(1892–1969)の "Manservant and Maidservant"(1947)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Manservant and Maidservant (New York Review Books Classics) 作者:Compton-Burnett, Ivy NYRB Classics Amazon [☆…

Virginia Woolf の “To the Lighthouse”(2)

Virginia Woolf のことはすっかり忘れていた。書棚に何冊か作品が飾ってあるだけで、いままで手に取ったこともほとんどなかった。 それどころか、ぼくのまわりで Woolf が話題にのぼることは、学生時代からいちどもなかったような気がする。先生方、先輩、友…

George Orwell の “Homage to Catalonia”(3)

前回(2)では、Orwell の現代性のうち些末な問題だけ採りあげた。マスコミの意図的な情報操作など、Orwell がスペイン内戦で目のあたりにした現象が、80年以上たった今日の東洋の島国でも認められるというもので、これを紹介した理由は、あまりに些末で指…

Virginia Woolf の “To the Lighthouse”(1)

Virginia Woolf の "To the Lighthouse"(1927)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Modern Classics To the Lighthouse (Penguin Modern Classics) 作者:Woolf, Virginia 発売日: 2000/10/31 メディア: ペーパーバック [☆☆☆☆★] 灯台の光は、姿は時々…

George Orwell の “Homage to Catalonia”(2)

レビューでまとめきれなかったことは山ほどある。あまりに多すぎて、それをひとつひとつ拾っていくと、いつまで続くか知れたものではない。 そこで思い切って、Orwell の現代性という点についてのみ補足することにした。それも今回は些末な問題だけ。 たとえ…

George Orwell の “Homage to Catalonia”(1)

きのう、George Orwell の "Homage to Catalonia"(1938)を読了。使用した text は Penguin Books 版(1977年刊)で、続編 "Looking Back on Spanish War"(1943)もふくまれる。さっそくレビューを書いておこう。 Homage to Catalonia (Penguin Modern Cla…

"Homage to Catalonia" 雑感

ぼくは洋書を読むとき、いつもメモをとることにしている。いわゆる5W1Hを基本に、そのほか気のついたことはなんでも書き留める。そうしないとすぐに忘れてしまうからだ。 メモ用紙はB5の裏紙(表は宮仕え時代に使用)を4つ折りにしたもの。これに3色のボー…

Edna O'Brien の “The Country Girls Trilogy”(2)

先週注文していた関根敏行トリオの廃盤『ストロード・ロード』がきょう到着。長らく入手困難だったが、最近出品に気がつきゲットした。期待どおり超ゴキゲン! ストロード・ロード アーティスト:関根敏行トリオ 発売日: 2007/02/02 メディア: CD さて前々回…

Edna O'Brien の “The Country Girls Trilogy”(1)

数日前、Edna O'Brien の "The Country Girls Trilogy" を読了。第1巻 "The Country Girls"(1960)、第2巻 "The Lonely Girl"(1962)、および第3巻 "Girls in Their Married Bliss"(1964)の合冊版(1987)である。 合冊の際、エピローグが補足されて…

“The Country Girls Trilogy” 雑感

このところ、Edna O'Brien の "The Country Girls Trilogy" をぼちぼち読んでいる。例によって、いつ、どんないきさつで入手したかは不明。前回まで扱った "The Balkan Trilogy" 同様、『新潮世界文学辞典』の年表には載っていない。が、こんどは作者にも題…

Olivia Manning の “The Balkan Trilogy”(2)

前々回、コロナの時代の読書はどうあるべきか、と書いた。大げさな問いのわりに、他愛もない答えだったが、それを故内藤陳ふうにまとめると、「読まずに死ねるか!」「読まずば二度死ね!」 早いところ、名作・傑作を読もうというわけだ。 亡き恩師も、若い…

Olivia Manning の “The Balkan Trilogy”(1)

きのう、Olivia Manning の "The Balkan Trilogy"(合冊版1987)を読了。第1巻 "The Great Fortune" は1960年刊、第2巻 "The Spoilt City" は1962年刊、第3巻 "Friends and Heroes" は1965年刊。さっそくレビューを書いておこう。 The Balkan Trilogy 作…

"The Balkan Trilogy" 雑感

コロナの時代の読書はどうあるべきか。 なに言ってるんだい。こんな時代だからといって、べつに新しい読みかたがあるわけじゃない。ただ読みたいものを読めばいいのさ。 たしかにそのとおり。時節柄、充実した自粛生活を送るべく、小説ファンなら未読の名作…

Akwaeke Emezi の “Freshwater”(1)

このところ、テンプながら復職した勤務先が超繁忙期。おかげで、ただでさえ遅読症なのに文字どおりカタツムリくんのペースだったが、それでもゆうべ、やっとのことで Akwaeke Emezi の "Freshwater"(2018)を読みおえた。今年の Women's Prize for Fiction …

Evelyn Waugh の “Sword of Honour”(3)

前回はこんな話だった。ぼくが最近読んだ海外文学の新作は五冊。どれもそれなりに面白いけれど、表題の『名誉の剣』三部作とくらべると、どれもかなり物足りない。(スターを付けてくださった shinread さん、brownsuga さん、ありがとうございます)。 なぜ…

Evelyn Waugh の “Sword of Honour”(2)

やっと(2)にこぎ着けた。ほんとうはもっと早く落ち穂拾いをするつもりだったのだけど、このところ、本書をダラダラ読んでいるうちに届いた新刊を片づけるのに追われてしまった。(本書のレビューにスターを付けてくださった kt-888さん、brownsugaさん、…

Evelyn Waugh の “Sword of Honour”(1)

きのう、Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)をやっと読了。周知のとおり、これは "Men at Arms"(1952)、"Officers and Gentlemen"(1955)、"Unconditional Surrender"(1961)を一冊にまとめた『名誉の剣』三部作である。 合冊版を上梓する際、Wa…

"Sword of Honour" 雑感(4)

なんとか体調が回復してきたようだ。気になるのは血圧だが、数値さえよければ、あしたからまたジムに通おうと思っている。(brownsuga さん、お気遣いのコメント、ありがとうございます)。 "Sword of Honour" のほうも、元の第三巻 "Unconditional Surrende…