ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年ぼくのベスト3小説

と題したものの、今年も読書量はお寒いかぎり。とてもベスト3など選べたものではない。このぶんでは、寝床のなかで追いかけている日本文学と同様、10冊未満のなかからマイベスト選出という笑い話のような年も、そう遠くはなさそうだ。 それどころか、今年刊…

Charles Yu の “Interior Chinatown”(1)

きのう今年の全米図書賞受賞作、Charles Yu の "Interior Chinatown"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Interior Chinatown: WINNER OF THE NATIONAL BOOK AWARDS 2020 作者:Yu, Charles 発売日: 2020/11/05 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(2)

このところ家の掃除で大忙し。かなり疲れるが、それでもあちこち動きまわれるのは、たぶんコロナにかかっていない証しだろうと思うとひと安心。2番目の孫ユマちゃんの初宮参りで鶴岡八幡宮に出かけたのが、ちょうど2週間前だからだ。 掃除がひと区切りつい…

ミステリ俳句

きのう、寝床のなかで『蜜蜂と遠雷』を読んでいたら、「夜は、まだ若い」という一文が出てきた。未読だがミステリも書いている恩田陸のこと、出典は明らかに、"Phantom Lady" の有名な書き出し、The night was young, and so was he. であろう。 そこでひら…

Marieke Lucas Rijneveld の “The Discomfort of Evening”(1)

今年の国際ブッカー賞受賞作、Marieke Lucas Rijneveld の "The Discomfort of Evening"(2018)を読了。Rijneveld はオランダの若手女流作家で、原語はオランダ語。さっそくレビューを書いておこう。 The Discomfort of Evening: WINNER OF THE BOOKER INTE…

Eric Dupont の “Songs for the Cold of Heart”(2)

師走もなかばすぎ。なにかと雑用に追われ、読書のほうはいつにもまして、まったりペース。途切れ途切れに "The Discomfort of Evening"(2018)を読んでいる。ご存じ今年のブッカー国際賞受賞作である。 序盤はまずまずだったけど、その後どうも盛り上がらな…

Susan Choi の “Trust Exercise”(2)

きのう鶴岡八幡宮へ、2番目の孫ユマちゃんの初宮参り。10年ほど前に倒れた有名な大銀杏の隣りに植えられた若木の葉がみごとに色づいていた。 このところ寝床のなかで読んでいる『キラキラ共和国』にもあるとおり、「週末の鎌倉では身動きが取れない」のがふ…

Eric Dupont の “Songs for the Cold of Heart”(1)

2018年のギラー賞最終候補作、Eric Dupont の "Songs for the Cold of Heart"(2012)を読了。カナダのファン投票では第1位に選ばれた作品である。さっそくレビューを書いておこう。 Songs for the Cold of Heart 作者:Dupont, Eric 発売日: 2018/07/01 メ…

Colson Whitehead の “Nickel Boys”(2)

クラシック・ファンならご存じのとおり、きょうはモーツァルトの命日。ぼくも先ほどまで、手持ちのレクイエムを流しながら、2018年の Shadow Giller 賞受賞作、Eric Dupont の "Songs for the Cold of Heart"(2012)を読んでいた。 Shadow Giller 賞とは、…

David Constantine の “Tea at the Midland and Other Stories”(2)とフランク・オコナー国際短編賞受賞作一覧

フランク・オコナー国際短編賞(Frank O'Connor International Short Story Award)と聞いてピンとくる文学ファンは、もはやそう多くないかもしれない。アイルランドの作家で短編の名手だった Frank O'Connor の栄誉をたたえて2005年に創設。毎年もっともす…

Susan Choi の “Trust Exercise”(1)

イギリスに発注した "Real Life" が手元に届くまで、場つなぎに Susan Choi の "Trust Exercise" を読んでいた。その後しばらく中断していたがボチボチまた読みはじめ、数日前にやっと読了。ご存じ2019年の全米図書賞受賞作である。なかなかレビューを書く気…

Brandon Taylor の “Real Life”(2)

やっとブッカー賞の季節が終わった。ぼくは今回、春先に Hilary Mantel の "The Mirror & The Light"(2020 ☆☆☆★★)を読んだあと、ショートリストの発表まで高みの見物。おなじブッカー賞でも、過去の受賞作や候補作を catch up していた。 もう昔のように、…

2020年ブッカー賞発表とぼくのランキング

本日早朝(ロンドン時間19日)、ブッカー賞の受賞作が発表され、現地ファンの下馬評どおり、Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)が栄冠に輝いた。ぼくもいちおう本命に推していた作品なので、この結果に不満はない。 受賞理由は未読だが、どのエピソー…

Tsitsi Dangarembga の “This Mournable Body”(2)と今年のブッカー賞予想

いよいよブッカー賞の発表が迫ってきた(ロンドン時間19日)。ぼくは最終候補作全6作のうち、表題作もふくめ、なんとか5作読了。あと1冊、Diane Cook の "The New Wilderness"(2020)を読み残しているが、これは現地ファンの下馬評ではいちばん人気薄。…

Brandon Taylor の “Real Life”(1)

前回ふれた事情でイギリスに priority 便で注文した Brandon Taylor の "Real Life"(2020)が予想外に早く到着(さすが旧大英帝国!)。おかげで、てっきり17日とばかり思い込んでいたブッカー賞の発表(ロンドン時間19日)前に、なんとか読みおえることが…

Colson Whitehead の “The Nickel Boys”(1)

さる7日、某大手通販会社からのメールに驚いたひともけっこういるのではないか。今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、"Real Life" のペイパーバック版が今月初めに日本でも発売され、7日までに到着という運びになっていた。ところが同日、なんの理由説明…

David Constantine の “Tea at the Midland and Other Stories”(1)

途切れ途切れに読んでいた David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)をやっと読了。2013年のフランク・オコナー国際短編賞の受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 Tea at the Midland: And Other Stories 作者:Const…

Tsitsi Dangarembga の “This Mournable Body”(1)

予定より大幅に遅れてしまったが、なんとか Tsitsi Dangarembga の "This Mournable Body"(2018)を読みおえた。今年のブッカー賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 This Mournable Body: SHORTLISTED FOR THE BOOKER PRIZE 2020 作者:Da…

Douglas Stuart の “Shuggie Bain”(2)

2013年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)の続きを1日1話ずつ読んでいたら、きょう、Tsitsi Dangarembga の "This Mournable Body"(2018)が届いた。さみだれ式に注文した今年…

Douglas Stuart の “Shuggie Bain”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞ならびに全米図書賞の最終候補作、Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Shuggie Bain: A Novel 作者:Stuart, Douglas 発売日: 2020/12/15 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★★★] 裏切ら…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(2)

先日、やっと Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)が手元に届いた。さっそく読みはじめたが、期待にたがわず面白い。ご存じ今年のブッカー賞ならびに全米図書賞最終候補作である。史上初の二冠達成か、と現地ファンのあいだでは大変な評判になっている…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2019年のロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補作でもありました)。 The Shadow King: SHORTLISTED FOR THE BO…

Adam Johnson の “Fortune Smiles”(2)

数日前、David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)を読んでいたら、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)がやっと届いた。さっそく乗り換えようと思ったが、"Tea at the Midland ... " が…

Avni Doshi の “Burnt Sugar”(2)

介護問題が文学の題材として採りあげられるようになったのは、いつごろからだろうか。ぼくがいままで書きためたレビューで「介護」を検索したところ、いちばん古い作品は、Alice Munro の短編集 "Dance of the Happy Shades"(1968 ☆☆☆☆★)所収の 'The Peace…

Adam Johnson の “Fortune Smiles”(1)

ゆうべ、Adam Johnson の "Fortune Smiles" を読了。2015年の全米図書賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 Fortune Smiles: Stories 作者:Johnson, Adam 発売日: 2016/11/17 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★★] 全六話の短編集で、評価は平均点…

Avni Doshi の “Burnt Sugar”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Avni Doshi の "Burnt Sugar"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Burnt Sugar: Shortlisted for the Booker Prize 2020 (English Edition) 作者:Doshi, Avni 発売日: 2020/07/30 メディア: Kindle版 [☆☆☆★★★] 聖…

"Burnt Sugar" と "Fortune Smiles" 雑感

きのう Adam Johnson の "Fortune Smiles"(2015)を読んでいたら、今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、Avni Doshi の "Burnt Sugar"(2019) がやっと届いた。さっそく乗り換えて読みはじめると、なかなか面白い。I would be lying if I said my mother's…

David Mitchell の “The Bone Clocks”(2)

David Mitchell の手持ちの旧作はこれでやっとぜんぶ読了。足かけ10年で6冊読んだことになる。まことにお恥ずかしいペースだが、ここで記念にその6冊を刊行順に並べておこう。1."Number9Dream"(2001 ☆☆☆☆) 2."Cloud Atlas"(2004 ☆☆☆☆★) 3."Black…

David Mitchell の “The Bone Clocks”(1)

David Mitchell の "The Bone Clocks"(2014)を読了。2014年のブッカー賞一次候補作、および2015年の世界幻想文学大賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Bone Clocks (English Edition) 作者:Mitchell, David 発売日: 2014/09/02 メディ…

"The Bone Clocks" 雑感

このところの急な冷え込みのせいか、ついに風邪をひいてしまった。症状から判断して、たぶんコロナではないと思うけれど、ぼくは微熱でもすぐに頭が痛くなるほうなので万事かったるい。 おかげで、ボチボチ読んでいた David Mitchell の "The Bone Clocks"(…