ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2018-01-01から1年間の記事一覧

William Faulkner の “The Town”(2)と “The Mansion”(2)

きのうの夕方、家の門に松飾りを取りつけたところで年末の雑用が終了。それまでずっと家の内外の掃除や買い物などで忙しかった。ほかにもジムに通ったり、近所に住んでいる初孫をダッコしたり、もっぱら身体を動かすことばかり。しばらく活字から遠ざかって…

William Faulkner の “The Hamlet”(2)

Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)をボチボチ読んでいる。周知のとおり、これは "Men at Arms"(1952)、"Officers and Gentlemen"(1955)、"Unconditional Surrender"(1961)という三部作が、上のタイトルのもとに合冊されたものだ。 ぼくとして…

Esi Edugyan の “Washington Black”(2)と、今年のブッカー賞回顧

ほんとうはスノープス三部作について補足する順番だが、先週からの流れで本書のことを書き足しておこう。 まずこれは10月のブッカー賞発表前、ひとつだけ読みのこしていた候補作。せっかく発表に間に合うように注文したのに、「発送したのですが途中で紛失し…

Esi Edugyan の “Washington Black”(1)

ゆうべ、今年のギラー賞受賞作、Esi Edugyan の "Washington Black"(2018)を読了。周知のとおり、本書は今年のブッカー賞最終候補作でもあり、また、ニューヨーク・タイムズ紙の年間ベスト5小説にも選ばれている。 ギラー賞はカナダで最も権威のある文学…

William Faulkner の “The Mansion”(1)とスノープス三部作

きのう、フォークナーの "The Mansion"(1959)をやっと読了。ご存じスノープス三部作の最終巻である。 この三部作はフォークナーの晩年を代表する高峰群であり、今回の縦走により、またひとつ長年の宿題を片づけることができた。なんだか、ちょっぴり三浦雄…

"The Mansion" 雑感(2)

本書は登場人物の名前を冠した三章から成り、きょうはジムに出かける前、やっと最終章 'Flem' に突入。フォークナーにしてはやはり読みやすい。 余裕のできたところでフォークナー英語のむずかしさについて、こんどは文法レベルでコメントしておこう。大昔、…

"The Mansion" 雑感(1)

ゆうべ愛媛の田舎から帰ってきた。向こうにいたのは実質一日、日曜日だけ。あわただしい帰省だった。 だから、どうせ読めないだろうと思いつつ、フォークナーの "The Mansion"(1959)をバッグに詰め込んだが、飛行機やバスの中で意外にも先へ進むことができ…

Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage"

フォークナーの "The Mansion"(1959)をボチボチ読んでいる。おなじ作家の作品を三冊も立て続けに読むのは、おそらく初めてだろう。いつもなら、作風が新鮮に感じられるように間隔を置くところだ。 あ、ちがってた。エクセルの読書記録をいま見ると、今年の…

William Faulkner の “The Town”(1)

このところボチボチ読んでいた Faulkner の "The Town"(1957)をやっと読了。周知のとおり、the Snopes trilogy スノープス三部作の第二巻である。さっそくレビューを書いておこう。 The Town (Vintage International) 作者: William Faulkner 出版社/メー…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(3)

ここ数日、いままでサボっていた過去記事の分類をボチボチやっていた。中にはタイトルを見ただけでどんな本かすぐに思い出したものもあるが、それはレアケース。レビューを読み返してもピンと来ない本のほうが圧倒的に多い。 そんなときは前後の記事から判断…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(2)

恥ずかしながら、Orhan Pamuk の作品を読んだのは本書が2冊目。日本では「オルハン・パムク」と表記されていることも、何ヵ月か前に “My Name Is Red”(1998 ☆☆☆☆★)を読むまで知らなかった。 宮仕えの時代にこのノーベル賞作家を敬遠していたのは、同書を…

Lawrence Durrell の “Clea (Alexandria Quartet 4)”(3)

きょう久しぶりにジムに行ったところ、恐れたとおり足がガクガク。ひところの半分も走れなかった。やはり間を置きすぎてはいけない。 英語もおなじ。いま読んでいるフォークナーはなんと10年ぶり。記録によると、10年前も3年ぶりということだから、フォーク…

Lawrence Durrell の “Clea (Alexandria Quartet 4)”(2)

ようやく風邪も治り、フォークナーのスノープス三部作第二巻 "The Town"(1957)を読んでいる。前作ほどではないが難渋する箇所がけっこうあり、今回も時間がかかりそうだ。フォークナーは10年前でさえ手こずったのに、 老後に取り組んでみると、いやはや、…

William Faulkner の “The Hamlet”(1)

ああ、やっぱりヤマカンどおり、今年の全米図書賞は Sigrid Nunez の "The Friend" に決まりましたね! しかし当面、読書予定はけっこう詰まっている。とりあえず、来年2月に出るというペイパーバック版を待つことにしよう。 さて、このところ体調不良につ…

Lawrence Durrell の “Mountolive (Alexandria Quartet 3)”(3)

前回ぼくは、四部作のうち本書だけが三人称となっている理由として、それまでの流れに「コペルニクス的転回」をもたらすため、という趣旨のことを書いた。この点についてもう少し補足しておこう。 アレクサンドリア四重奏は構成が非常に複雑で、内容的にもす…

Lawrence Durrell の “Mountolive (Alexandria Quartet 3)”(2)

一週間前に風邪をひき、売薬でなんとかごまかしていたのだが治らず、きのう医者に診てもらったところ。確実に免疫力が落ちている。 ふだんにも増して頭が働かないが、とりあえずアレクサンドリア四重奏の第三巻、"Mountolive" について補足しておこう。 これ…

Lawrence Durrell の “Balthazar (Alexandria Quartet 2)”(2)

やっと本ブログのデザインがほぼ完成。ほんとうはいろいろカスタマイズできるらしいのだが、おじいちゃんにはシンドイ。飽きるまで当分、このままにしておこう。 過去記事の分類も面倒くさくなり、いったん休憩。また本ブログでは未公開のレビューもまだいく…

Phil Klay の “Redeployment”(2)とイラク戦争関連の小説

今年の全米図書賞は11月14日に発表。ちらっと検索したかぎり、Sigrid Nunez の "The Friend" が面白そうだが、今月はもう予算的に購入は無理。もしヤマカンどおり栄冠に輝いたら、来年2月に出るというペイパーバック版を待つとしよう。 The Friend: A Novel…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(1)

きのう、ノーベル賞作家 Orhan Pamuk の "The While Castle"(1985)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は、1990年に創設されたインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞の第一回受賞作でした)。 The White Castle (Vintage Internatio…

Philip Roth の “The Human Stain”

相変わらず過去記事の整理中。きょうも前回同様、本ブログでは未発表のレビューでお茶を濁しておこう。 なんだ、それならコピペすればいいだけじゃん、と思われるかもしれないが、昔のレビューほど〈拙文度〉が激しい。しかも、点数評価をしていない場合が多…

Allan Silitoe の “The Loneliness of the Long Distance”

はてなブログに切り替えてから依然、工事中。過去記事の分類で忙しい。そこで気がついたのだが、大昔アマゾンに投稿後、削除したレビューのうち、まだ本ブログでは一度もアップしていないものがあった。きょうはそれでお茶を濁しておこう。周知のとおり、Sil…

Patrick Modiano の “Villa Triste”(2)

ゆうべ、愛媛の田舎からやっと帰ってきた。久しぶりに長い帰省とあって、本を3冊バッグに忍ばせたのだが、最初の、それもいちばん薄いやつをまだ読みおえていない。 今回は、母が新しい高齢者介護施設に引っ越しすることになり、その手伝いが帰省の主目的。…

2018年ブッカー賞発表

ブッカー賞財団のホームページにはまだ載っていないが、イギリス現地ファンの速報によると、ロンドン時間で16日、今年のブッカー賞が発表され、Anna Burns の "Milkman" が栄冠に輝いた。3年ぶりに地元産の馬が勝利とあって、ファンたちは大喜び。どんどんコ…

Joan Silber の “Improvement”(2)

きょうからしばらく愛媛の田舎に帰省。といっても、この記事はきのう書いたもので、家を出る前にアップした。 結局、Esi Edugyan の "Washington Black" は予定日を過ぎても届かず、田舎から帰ってくるまで読めないことになった。ブッカー賞の発表(今月16日…

Phil Klay の “Redeployment”(1)

2014年の全米図書賞受賞作、Phil Klay の "Redeployment" を読了。Esi Edugyan の "Washington Black" が届き次第、そちらにすぐ乗り換えようと思ってボチボチ読んでいたのだが、受取予定日を過ぎたきょうになっても同書は未着。結局 "Redeployment" を読み…

Robin Robertson の “The Long Take”(2)

注文している Esi Edugyan の "Washington Black" がまだ届かない。ゆえに暫定的だが、前にも書いたとおり、今年のブッカー賞レースは、本命 "Overstory"、対抗 "Milkman" というのがぼくの予想。ただし、人間性にかんする洞察の深さという点では後者のほう…

Lawrence Durrell の “Clea”(1)と『アレクサンドリア四重奏』

ゆうべ、Lawrence Durrell の "Clea"(1960)を読了。これでやっと Alexandria Quartet(アレクサンドリア四重奏)を全巻通読したことになる。 The Alexandria Quartet [☆☆☆☆★★] The Alexandria Quartet: Justine, Balthazar, Mountolive, Clea (English Edi…

Anna Burns の “Milkman”(3)

先日テレビのクイズ番組で、「最近の小学校からなくなったものは何か」という質問があった。解答者もぼくもすぐに正解。 もちろん「二宮金次郎さんの銅像」だが、銅像の消えた理由を聞いてビックリ。「歩きながら本を読んでいると危険だから」。金次郎さんの…

Patrick Modiano の “Villa Triste”(1)

ご存じフランスのノーベル賞作家、Patrick Modiano の "Villa Triste"(1975)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Villa Triste: A Novel作者:Modiano, PatrickOther PressAmazon[☆☆☆★★] あの夏、ぼくは18歳。アルジェリア戦争の災禍を逃れ、遠くにス…

Lawrence Durrell の “Mountolive (Alexandria Quartet 3)”(1)

Lawrence Durrell の "Mountolive"(1958)を読了。周知のとおり、"Justine"(1957)に始まる Alexandria Quartet の第三巻である。さっそくレビューを書いておこう。Mountolive (Alexandria Quartet)作者:Durrell, LawrencePenguin BooksAmazon[☆☆☆☆★★] 驚…